ベルンの自転車通勤——首都なのに坂だらけ、それでも乗る理由
スイスの首都ベルンは人口13万人のコンパクトな街だが、アーレ川沿いの地形は坂が多い。それでも自転車通勤者が増えている理由と、在住者のリアルな自転車事情を紹介します。
この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。
ベルンの旧市街はアーレ川に囲まれた半島状の地形にある。川面から旧市街までの標高差は約30〜40m。つまり、どの方向から旧市街にアクセスしても坂がある。「平坦な道を選んで走る」という選択肢がほぼ存在しない街で、自転車通勤者は増えている。
E-Bikeが変えたゲーム
スイス全体で2024年のE-Bike(電動アシスト自転車)の販売台数は約20万台。自転車販売全体の約55%がE-Bikeという状況だ(Velosuisse統計)。
ベルンでE-Bikeが普及した理由は明確で、坂が多いからだ。通常の自転車では汗だくになるアーレ川からの上り坂を、E-Bikeならスーツ姿でも問題なく登れる。価格は3,000〜6,000CHF(約51万〜102万円)が主流帯。日本のママチャリの感覚で買える金額ではないが、車を所有するコスト(駐車場代だけで月150〜300CHF)を考えると、長期的にはE-Bikeの方が安くつく場合もある。
インフラの現状
ベルンの自転車インフラは「進行中」というのが正直な評価だ。コペンハーゲンやアムステルダムのような完全な自転車専用レーンの網が整っているわけではない。
2023年にベルン市は「Velooffensive」(自転車攻勢)というプロジェクトを発表し、2030年までに自転車専用レーンの総延長を大幅に拡充する計画を進めている。現時点では、旧市街周辺の一部の通りに自転車レーンがあるが、車道との共有区間も多い。
駐輪場はベルン中央駅地下に大規模なVelostation(約2,700台収容)があり、月額約20CHF(約3,400円)で利用できる。電源付きのE-Bike専用スペースもある。
冬の問題
11月〜3月のベルンは平均気温が0〜5℃前後で、雪が降ることもある。路面凍結が自転車通勤の最大のリスクだ。
冬用のスパイクタイヤ(Spike-Reifen)を装着して乗り続ける人もいるが、多くの自転車通勤者は冬季にトラムやバスに切り替える。ベルンのBernmobil(市内公共交通)はトラム5路線・バス多数を運行しており、自転車が使えない時期の代替手段は充実している。
シェア自転車
ベルンにはPubliBikeというシェア自転車サービスがあり、市内約70カ所のステーションで自転車・E-Bikeを借りられる。30分あたり通常自転車1.5CHF(約255円)、E-Bike3.5CHF(約595円)。年間パスは通常自転車99CHF(約1.7万円)。
通勤に毎日使うなら自分のE-Bikeを買った方が安いが、「週に2〜3回、天気のいい日だけ」という使い方ならPubliBikeで十分だ。
ベルンは「自転車先進都市」とは言いがたいが、E-Bikeの普及とインフラ投資が進んでおり、状況は年々改善している。坂の多い街だからこそ、E-Bikeの恩恵が大きいとも言える。