少子化と家族政策——スイスの出生率と女性就業率が共に低い構造
スイスの合計特殊出生率は約1.4(2022年)。女性の就業率が高くない一因が保育費の高さにある。スイスの家族政策の課題と在住外国人への影響を解説。
スイスの合計特殊出生率は2022年に1.39(連邦統計局)。日本(1.20)よりは高いが、人口を維持する水準(2.1)を下回っている。
興味深いのは「女性の就業率も出生率も高くない」という状態が同時に成立していることだ。通常、北欧諸国では女性就業率と出生率が共に高い。スイスはこの相関が弱い。
保育費の高さが壁
スイスで子どもを産み、共働きを続けるためには認可保育所(Kita)が必要だ。しかしKita費用は月CHF 1,500〜2,500(約26万〜43.8万円)が相場で、2人目が入ると家庭の可処分所得が大幅に縮小する。
「働いて得られる収入よりKita費用が上回る」という計算になる世帯では、片方の親(多くは母親)が就労を控える選択をする。これがパートタイム就業率の高さ(スイスの女性の60%以上がパートタイム)と出生率の低下に繋がっているという分析がある。
家族手当(Kinderzulage)
スイスでは子ども1人につき月CHF 200〜300(約3.5万〜5.3万円)の家族手当がカントンによって支給される。共働きの場合は一方の雇用主が代表して申請・支払いを行う。
外国人(Bパーミット以上)も対象になるため、スイスで子育てをする場合は申請を忘れないようにしたい。
産休・育休の長さ
スイスの産休は14週間(有給)が法定最低ラインで、日本の産後休業(8週間)より長いが、OECD平均より短い。父親の育児休業は2週間(2021年から導入)。
育休中の給与補償は収入の80%(上限CHF 220/日)だ。長期育休を取る文化は発達しておらず、「早く復帰するか、Kita費用を払うか、就業を控えるか」という選択を迫られる構造が続いている。