スイスの賃貸で釘を打つと退去費用が跳ね上がる——原状回復ルールの厳しさ
スイスの賃貸住宅は原状回復義務が厳格で、壁の釘穴すら退去時に修繕費を請求される。Abnahmeprotokollの読み方と退去時のトラブル回避法。
この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。
スイスの賃貸物件に引っ越して最初にやりたいこと——壁に絵を掛けること。しかしその釘1本が、退去時にCHF 200(約34,000円)の修繕費になる可能性がある。
スイスの原状回復ルールは、日本の敷金精算の比ではない。入居時と退去時に管理会社の担当者が立ち会い、壁・床・設備の状態を「Abnahmeprotokoll(引渡検査調書)」として詳細に記録する。指先でなぞった傷まで記載されることもある。
入居時のAbnahmeprotokoll
入居時の記録が退去時の基準になる。既存の傷・汚れは全て入居時に記録しておかないと、退去時に自分の責任にされる。
具体的にやるべきこと:
- 全ての部屋を写真撮影(日付入り)
- 壁の傷、床の汚れ、設備の不具合を全て記録用紙に記入
- 記入漏れがないか確認してからサインする
- サインした書類のコピーを必ず保管する
管理会社が「問題なし」と口頭で言っても、書類に書かれていなければ証拠にならない。
退去時に高額請求されやすい項目
| 項目 | 修繕費の目安 |
|---|---|
| 壁の釘穴(1カ所) | CHF 50〜200(約8,500〜34,000円) |
| 壁の塗り直し(1部屋) | CHF 500〜1,500(約85,000〜255,000円) |
| 床の傷・凹み | CHF 200〜800(約34,000〜136,000円) |
| キッチンの油汚れ | CHF 100〜400(約17,000〜68,000円) |
壁の塗り直しは、スイスでは「通常の使用による劣化」と「借主の責任による損傷」が明確に区分されている。入居期間に応じた減価償却(Amortisation)が適用され、長く住むほど借主の負担割合は下がる。一般的に、壁の塗装は8年で全額償却される。
トラブル回避のポイント
退去日の2〜3カ月前にプロの清掃業者(Reinigungsfirma)を入れるのが定番だ。費用はCHF 300〜600(約51,000〜102,000円)程度だが、自分で掃除して不合格になるよりはるかに安全だ。
Mieterverband(借主協会)に加入しておくと、退去時のトラブルで法的相談を受けられる。年会費はCHF 70〜100(約11,900〜17,000円)程度。高額請求を受けた際の交渉で元が取れることが多い。