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インターラーケン——アジア観光客が支える山岳観光経済の構造

ユングフラウ地方の玄関口インターラーケンは、アジアからの団体客が経済を動かす特殊な観光都市だ。在住者から見た観光産業の構造と、暮らしへの影響を整理する。

2026-05-08
スイスインターラーケン観光ユングフラウ経済

この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。

インターラーケンのメインストリート(ヘーエヴェグ)を歩くと、看板の半分以上がアジア言語で書かれていることに気づく。人口5,800人ほどの小さな町に、年間100万人を超える宿泊客が訪れる。

なぜインターラーケンに人が集まるのか

理由はシンプルで、ユングフラウヨッホ(標高3,454m、ヨーロッパ最高地点の鉄道駅)へのアクセス拠点だからだ。トゥーン湖とブリエンツ湖に挟まれた平地に位置し、グリンデルヴァルトやラウターブルンネンへの鉄道の乗り換え地点になっている。

ユングフラウ鉄道の往復チケットはCHF 230程度(約39,100円)。決して安くないが、世界中から「一生に一度」を求めて人が来る。ユングフラウ鉄道グループの年間売上は約CHF 2.5億(約425億円)に達する。

アジア観光客の比率

COVID前の2019年時点で、ユングフラウヨッホの訪問者の約7割がアジア圏からだった。インド・韓国・中国・日本・東南アジアの団体客が中心だ。ボリウッド映画『DDLJ(Dilwale Dulhania Le Jayenge)』のロケ地としてインド人に圧倒的な知名度がある。

町の経済がアジア観光客に依存する構造は、COVID時に浮き彫りになった。2020年、宿泊数は前年の約3分の1にまで落ちた。スイス国内観光キャンペーン「Swisstainable」でヨーロッパ客を取り込もうとしたが、アジア客の穴は埋まらなかった。

在住者の目から見たインターラーケン

スイスに住んでいると、インターラーケンは「住む町」というより「通過する町」だ。ベルンからBLS鉄道で約50分。グリンデルヴァルトやラウターブルンネンでのハイキングの起点として使う。

ヘーエヴェグ周辺は観光客向けの時計店・チョコレート店・土産物店が並び、ローカル向けの生活インフラは少ない。日用品の買い物はコープやミグロで問題ないが、レストランは観光地価格になりがちだ。

一方、少し離れたウンターゼーン(Unterseen)地区は地元住民の暮らしが残っている。旧市街の石畳の通りに小さなカフェやベーカリーがあり、観光客の喧噪から離れられる。

ベルナー・オーバーラントに住むという選択肢

インターラーケン周辺に実際に住む日本人は少ないが、テレワークの普及で可能性は広がっている。家賃はチューリッヒやジュネーブより格段に安く、3.5部屋(1LDK相当)でCHF 1,200〜1,500(約204,000〜255,000円)程度。アルプスの景色の中で暮らすことの精神的な豊かさは数字では測れない。

ただし冬の日照時間は谷間のため極端に短くなる。山に囲まれている地形上、11月〜2月は太陽が山の稜線に隠れて直射日光がほとんど当たらない日もある。この点は移住前に実際に冬に訪れて確認した方がいい。

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