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スイスのパンは200種類——日曜日にしか買えないZopfと、焼きたてへの執着

スイスには200種類以上のパンがあり、日曜日の朝食用にZopf(編みパン)を焼く文化がある。ベーカリーの使い方から地域別のパン文化まで、在住者の視点で解説。

2026-05-22
パン食文化ベーカリーZopf生活

この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。

スイスのパンの種類は200以上。人口880万人の国に200種類以上のパンがあるということは、4.4万人に1種類の計算になる。日本の「食パン」「フランスパン」「クロワッサン」では収まらない多様性だ。

しかも日曜日には店が閉まる国で、土曜の夜にZopf(ツォップフ)という編みパンを焼く家庭が今も多い。バター・卵・牛乳をたっぷり使った柔らかいパンで、日曜の朝食にジャムとバターで食べる。スイス人にとって日曜のZopfは、日本人にとっての正月の雑煮に近い——ないと「何か足りない」朝になる。

ベーカリーの立ち位置

スイスの街を歩くと、ベーカリー(Bäckerei)の密度に気づく。チューリッヒだけでも200軒以上ある。Migros・Coopなどのスーパー内にもパン売り場があるが、スイス人は「ちゃんとしたパン」はベーカリーで買う。

朝6時に開店するベーカリーの前に、出勤前のスイス人が並ぶ。Gipfeli(スイス版クロワッサン)とコーヒーを買い、通勤電車で食べる。これがスイスの朝のリズムだ。

パンの価格はスーパーで1個CHF 1〜2(約170〜340円)、ベーカリーでCHF 2〜5(約340〜850円)。日本のベーカリーとほぼ同じか、やや高い。

地域別のパン

パンは地域アイデンティティの一部だ。

  • ベルナーBrot(ベルン):硬めの皮と酸味のある生地。ライ麦が混ざっている
  • Tessinerbrot(ティチーノ):イタリアのチャバッタに近い白パン。オリーブオイルが使われることも
  • Bürli(チューリッヒ周辺):小さく丸い白パン。外はカリカリ、中はもちもち
  • Walliser Roggenbrot(ヴァレー):ライ麦100%の丸い黒パン。AOP認定

同じ国なのに、州を越えるとパンが変わる。言語圏の境界線とパンの境界線は、驚くほど一致する。

焼きたてへの執着

スイス人は翌日のパンを嫌う。前日のパンは「alt(古い)」と呼ばれ、価値が下がる。ベーカリーで夕方に割引されるパンは、その日の朝に焼いたものだ。

この「焼きたて至上主義」は、パンが保存食だった歴史を持つ他のヨーロッパ諸国(ドイツの硬いパン、フランスのバゲット文化)とは異なる。スイス人はパンに鮮度を求める。魚に鮮度を求める日本人と、意外な共通点がある。

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