日曜日にしか焼かないパン——スイスのツォプフと「特別な朝」の設計
スイスの家庭では日曜日にZopf(ツォプフ)という編みパンを焼く。スーパーでも土曜だけ並ぶこのパンが、スイスの「日曜日」の設計を象徴している。
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土曜日のスイスのスーパーに行くと、平日には見かけない黄金色のパンが並んでいる。Zopf(ツォプフ)。三つ編みの形をした、バターと卵が贅沢に入った柔らかいパンだ。
このパンは月曜から金曜にはほとんど売られていない。「日曜日の朝食用」という暗黙のルールがあるからだ。
なぜ日曜日なのか
スイスのZopfの歴史は中世に遡る。もともとは女性が夫の死後に自分の髪の三つ編みを棺に入れる風習の代替として、パンを編むようになったとされる。時代とともに宗教的な意味は薄れ、「日曜日だけの特別なパン」という位置づけが定着した。
日曜日の朝食は、平日よりもゆっくり時間をかけるのがスイスの家庭の慣習だ。Zopf、バター、Konfitüre(ジャム)、チーズ、ハム、ゆで卵——テーブルの上にこれらが並ぶのは日曜日だけだ。
Zopfの作り方
材料はシンプルだ。小麦粉、バター、卵、牛乳、イースト、塩。バターの比率が高いのが特徴で、小麦粉500gに対してバター100g程度を使う。フランスのブリオッシュに近いが、Zopfの方が若干しっかりした食感になる。
土曜の夜に生地をこねて一次発酵させ、日曜の朝に成形して焼く。焼き時間は約30分。焼きたてのZopfにバターを塗り、地元産のKirsch-Konfitüre(チェリージャム)をのせて食べるのが、スイスの日曜日の味だ。
買うとしたら
Migros、Coopで土曜日にCHF 2.50〜4.50(約425〜765円)で売られている。地元のBäckerei(パン屋)の手作りZopfはCHF 5〜8(約850〜1,360円)程度。差額分の味の違いは確実にある。
日曜朝食のテーブル
Zopfだけが主役ではない。日曜の朝食テーブルには、地域によって異なるが、おおむね以下が並ぶ。
- Butter(バター): ローカルの農場バターが理想
- Konfitüre(ジャム): アプリコット、チェリー、ブルーベリーが定番
- Käse(チーズ): グリュイエール、アッペンツェラー等の地元チーズ
- Aufschnitt(スライスハム・サラミ)
- Weich gekochtes Ei(半熟ゆで卵)
- Birchermüesli(ビルヒャーミューズリ): スイス発祥のオーツ+ヨーグルト+フルーツ
この朝食を30分で済ませる家庭はほとんどない。1時間〜1時間半かけてゆっくり食べる。
スイスの日曜日は、法律で店が閉まり、洗濯も掃除も控え、教会の鐘が鳴り、Zopfを食べる日だ。一週間の中に「普通の日と違う日」を意図的に設計する。その設計思想の中心に、一つのパンがある。