スイスの自治体ゲマインデは「町内会」ではない——年間予算数十億円を住民が直接決める仕組み
スイスの最小行政単位ゲマインデ(Gemeinde)は日本の町内会とは根本的に異なる。数十億円規模の予算を住民総会で直接議決するスイスの地方自治の実態。
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スイスには約2,100のゲマインデ(Gemeinde、自治体)がある。人口30人の山村から40万人のチューリッヒ市まで。この「ゲマインデ」が、日本の市区町村とも町内会とも全く違う存在だ。
小規模なゲマインデでは、年に数回の住民総会(Gemeindeversammlung)で予算を直接議決する。数千万CHF(数十億円)規模の予算案が、体育館に集まった住民の挙手で決まる。学校の建て替え、道路の舗装、税率の変更——すべてが住民の手で。
税率が隣町と違う
スイスの税制は連邦・州(カントン)・ゲマインデの三層構造になっている。ゲマインデごとに独自の税率係数(Steuerfuss)を設定できるため、隣り合う自治体で税負担が大きく異なる。チューリッヒ州内だけでも、最も安いゲマインデと最も高いゲマインデで税率が2倍近く開くことがある。
引っ越し先を選ぶとき、スイス人は通勤時間と同じくらい真剣にゲマインデの税率を調べる。不動産価格が安くても税率が高ければ意味がない。その逆もある。
外国人は参加できるか
外国人の住民総会への参加権は、ゲマインデと州によって異なる。ヌーシャテル州やジュラ州では、一定期間の居住後に外国人にも地方参政権が認められている。一方、チューリッヒ州やベルン州では、スイス国籍がなければ住民総会で投票できない。
B許可(滞在許可)で住んでいる場合、まずは傍聴から始めることになる。議論の進め方を見るだけでも、スイスの意思決定の文化がよく分かる。
行政サービスの窓口でもある
ゲマインデは住民登録(Anmeldung)、転入届、転出届、犬税の徴収、ゴミ収集の管理など、日常生活に直結するサービスの窓口だ。日本の市役所に近い機能を持つが、規模が小さいぶん対応が属人的になりやすい。担当者と顔見知りになれば話が早いし、逆に関係がこじれると面倒なこともある。
スイスに住むということは、どこかのゲマインデの構成員になるということだ。それは単なる住所登録ではなく、自分が住む場所の運営に——少なくとも形式的には——参加する権利と責任を持つことを意味している。