スイスドイツ語とドイツ語の壁——学校で習った言語が通じない現実
スイスのドイツ語圏に着いてすぐ気づくこと——現地の人たちが話す言葉が、学校で習ったドイツ語と全く違う。スイスドイツ語(Schweizerdeutsch)の実態と対処法。
チューリッヒに着いた初日、カフェで「Einen Kaffee, bitte」と頼んだら、店員が流暢なスイスドイツ語で何かを返してきた。聞き取れたのは「カフェ」という単語だけ——これは珍しい体験ではない。
スイスのドイツ語圏(Deutschschweiz)では、日常生活でスイスドイツ語(Schweizerdeutsch)が使われる。これは標準ドイツ語(Hochdeutsch)とは発音・語彙・文法が大きく異なる方言群だ。
どのくらい違うのか
標準ドイツ語の「Ich habe es gemacht(私はそれをしました)」は、スイスドイツ語で「Ich ha's gmacht」に近い形になる。動詞の過去形は過去完了で代用され、語尾の「-en」は「-e」や消滅し、語頭の子音は独特の喉音になる。
チューリッヒ・ベルン・バーゼルでも方言が違い、お互いに「なまりがある」と感じることもある。スイスドイツ語に統一規格はなく、書き言葉は基本的に存在しない。
学校でドイツ語を学んでも話せない理由
ゲーテ・インスティトゥートやスイスの公立語学学校で学ぶのは標準ドイツ語だ。試験はHochdeustchで行われ、文書・テレビニュース・ビジネスメールも標準ドイツ語が使われる。
ところが街に出ると、誰もが方言で話している。スーパーのレジ・隣人との雑談・子どもの保育所の親同士——全部スイスドイツ語だ。
スイス人はHochdeutschを話せる。ただ「なぜわざわざ標準語で話す必要が?」という感覚があり、外国人に話しかけられると英語に切り替える人も多い。
対処法として有効なこと
方言を完璧に習得しなくても、標準ドイツ語でコミュニケーションは取れる。相手がスイスドイツ語で話し続けても、こちらが標準ドイツ語で返すという「半方言会話」が成立する。
スイスドイツ語の聞き取りに慣れるには、YouTubeのスイスドイツ語コンテンツや、SRF(スイス公共放送)のバラエティ番組が手軽な教材になる。
「聞けはするが話せない」状態を目指すのが、多くの在住外国人が行き着く現実的なゴールだ。完璧な方言習得よりも、相手の言っていることが分かることの方がずっと生活に役立つ。