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スイスの氷河が消えている:「永遠の雪」を前提にした観光業の転換点

スイスには約1,500の氷河があるが、温暖化により急速に縮小・消失しつつある。氷河を目当てにした観光業はどう変わるのか。数字と現場の実態を紹介する。

2026-06-09
氷河気候変動スイス観光アルプス

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2022年、スイスの氷河は体積の6%を一年で失った。これは1960年代以降で最大規模の年間損失だとされる(出典:ETH Zurich・GLAMOS スイス氷河監視機構)。猛暑と少雪が重なった年だが、長期的な温暖化トレンドの一部でもある。

スイスには約1,500の氷河があるが、21世紀末までに大部分が消失するという予測がある(出典:Swiss Re・ETH Zurich共同研究)。

ローヌ氷河の「毛布」

スイス中部のローヌ氷河(Rhonegletscher)では、夏の間に融解を遅らせるため白いジオテキスタイル毛布で氷河を覆う取り組みが続けられている。数ヘクタールをカバーする毛布は、氷河ホテルを守るために始まり、今では観光スポットの一部になっている。

「氷河を守るために毛布をかける」という光景は、温暖化の象徴として国際メディアに繰り返し取り上げられた。

アレッチ氷河:ユネスコ世界遺産の変化

スイス最大の氷河はアレッチ氷河(Aletschgletscher)で、長さ約23km、ユネスコ世界自然遺産にも登録されている(出典:UNESCO)。しかしこの氷河も過去数十年で大幅に後退している。19世紀の最大時と比べると数kmの後退が確認されている(出典:GLAMOS)。

フィーチュアルプという展望台から見える氷河の景観は今も壮大だが、「ここにあった氷が昔はもっと多かった」という感覚が、訪れるたびに増す。

観光業への影響

スキーリゾートはすでに影響を受けている。標高の低いゲレンデでは雪不足のため人工雪への依存が高まり、コストが増加している(推定)。高標高地帯(2,500m以上)のリゾートは比較的影響が少ないが、長期的には移行が避けられない。

グリンデルワルト(Grindelwald)やツェルマット(Zermatt)など氷河観光が売りの地域では、「氷河が見られるうちに来てください」という逆説的な宣伝文句が実態として生まれつつある。

水資源としての氷河

スイスの氷河は単なる景観ではなく、夏の水資源でもある。氷河が溶けることで夏の河川水量が維持され、発電・農業・飲料水に使われる。氷河が減ると、短期的には融解水量が増えるが、長期的には夏の水不足リスクが高まる(出典:スイス環境省 BAFU)。

在住日本人がこの問題を「観光の変化」として見るか「生活インフラの変化」として見るかで、スイスの気候変動への向き合い方の解像度が変わる。永遠に見えた雪が、実は期限付きだったということ——それをスイスの山が示している。

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