イノベーション大国の実態——特許件数世界1位のスイスと在住者が感じるその空気
スイスは2023年のGIIイノベーション指数で13年連続1位。製薬・精密機械・金融テクノロジーが牽引するイノベーション大国の実態と、在住外国人が感じる現場の空気。
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世界知的所有権機関(WIPO)のグローバル・イノベーション・インデックス(GII)で、スイスは2011年から連続して1位を獲得してきた。特許出願件数では人口あたりの比率が世界トップクラスに入る。
この数字は何が作っているのか。
製薬・化学産業の集積
バーゼルに本社を置くロシュとノバルティスは、世界の製薬売上上位5社に入る。バーゼル周辺には1,000社以上のライフサイエンス系企業が集まり、研究者・エンジニア・規制専門職の需要が常にある。
スイスのR&D投資は対GDP比で約3.4%(2020年代の公式統計)。これは日本(約3.3%)やドイツ(約3.1%)を上回る水準だ。
ETHチューリッヒの存在
チューリッヒ工科大学(ETH Zürich)は世界大学ランキングで常にトップ10圏内にある(QS世界大学ランキング2024年で7位)。アインシュタインをはじめ22人のノーベル賞受賞者を輩出した研究機関で、スタートアップの発射台としても機能している。
ETH関連のスタートアップはチューリッヒ周辺に多く、ETH転校制度(spin-off制度)によって研究が事業化しやすい環境がある。
在住者が感じるイノベーションの空気
「スイスは保守的」という印象と、「イノベーション大国」という数字の間にギャップを感じる在住者は多い。
街を歩いてもシリコンバレーのような熱狂はなく、人々は淡々と仕事をしている。しかしその落ち着いた環境が、長期的な研究・開発に集中できる理由でもある。
フィンテック・メドテック・クリーンテック系の企業が増加しており、チューリッヒでの就職先の選択肢は広がっている。英語でのポジションも多く、ドイツ語がまだ不十分な段階でも専門職として働ける環境が整いつつある。