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スイスの育休制度——先進国なのに父親の育休が2週間しかない現実

スイスの育児休暇制度は西欧の中では後発。母親14週間、父親2週間の制度内容と在住者の子育て事情を解説します。

2026-05-12
スイス育休子育て家族制度

この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。

スイスは一人当たりGDPが世界トップクラスの豊かな国だ。しかし父親の育児休暇はわずか2週間。北欧の数ヶ月〜1年と比べると、桁が違う。この育休制度が導入されたのも2021年と、つい最近の話だ。

母親の産休:14週間

スイスの母親は出産後14週間(約3.5ヶ月)の産休を取得できる。この期間は所得の80%が補償される(上限は日額220CHF、約37,400円)。出産前の産休は法律上は定められていないが、医師の診断書があれば休むことが可能だ。

14週間という期間は、EU諸国と比較しても短い部類に入る。ドイツは14週間+最大3年の育児休暇、フランスは16週間の産休がある。スイスは「産後に復帰を急がされる」と感じる在住者が少なくない。

父親の育休:2週間

2021年に国民投票で承認された父親の育児休暇は、出産後6ヶ月以内に2週間を取得できる制度だ。連続で取ることも、日単位で分割することもできる。補償は所得の80%。

2週間で何ができるか。退院の付き添い、出生届の手続き、上の子の世話の調整。あっという間に過ぎる。「2週間では何も変わらない」という批判は国内でも根強い。

保育園(Kita)の現実

育休が短いなら保育園に預ければいい——理屈ではそうだが、スイスの保育料は世界でも最高水準だ。

チューリッヒの認可保育園(Kita)に週5日預けると、月額2,000〜3,000CHF(約340,000〜510,000円)。所得に応じた減額制度があるが、それでも月1,000CHF以上は覚悟が必要。この金額は日本の認可保育園の月額と比較にならない。

空き枠も慢性的に不足している。妊娠がわかった時点でウェイティングリストに登録する人も多い。出産後に「保育園が見つからない」と焦るケースは在住日本人の間でもよく聞く話だ。

結果として起きていること

高い保育料と短い育休の組み合わせが、スイスの女性の労働参加率に影響を与えている。スイスの女性就業率は高いが、パートタイム率がヨーロッパでも際立って高い。子どもが生まれると、多くの家庭で母親が勤務日数を減らし、父親がフルタイムを続けるという伝統的な分担に落ち着く。

共働きでフルタイムを続ける場合、保育料が一人分の給与を食いつぶすことも珍しくない。「何のために働いているかわからない」という声はスイス在住の親から頻繁に聞かれる。

在住日本人の選択肢

日本の育休制度(最長2年、給付金あり)と比較すると、スイスの制度は見劣りする。在住日本人の中には、出産を機に一時帰国して日本で出産し、産後のサポートを受けてからスイスに戻る人もいる。

また、一部の企業は法定以上の育休を独自に提供している。テック企業や国際機関では、母親に数ヶ月の追加育休、父親にも4〜8週間を認めるケースがある。転職時に育休制度を確認することは、スイスでは非常に合理的な判断だ。

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