スイスの徴兵制と民間防衛:人口870万人の国がなぜ核シェルターを全国民分持つのか
スイスは中立国だが徴兵制を維持し、国民全員分の核シェルターを完備している。戦争に備える「中立国の論理」と、在住外国人が知っておくべき民間防衛の実態を紹介する。
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スイスは「永世中立国」として知られるが、軍を持たない中立ではない。スイス軍(Armee)は徴兵制を維持し、成人男性(スイス国籍者)には原則として軍務義務がある(出典:スイス連邦軍 VBS/DDPS)。
そして核シェルター(Schutzraum)の整備率は世界トップ水準だ。
徴兵制の現実
スイスの男性は18〜20歳頃に徴兵検査を受け、適格とされた場合は軍務義務が生じる。基礎訓練は約18〜21週間で、その後も数年にわたって定期的な補習訓練(Wiederholungskurs)がある(出典:スイス連邦軍)。
軍務は現役ではなく「民兵(Milizsystem)」方式で、普段は民間で働きながら定期的に訓練に参加するスタイルだ。「エンジニアが週末に軍の演習に行く」という光景は、スイスでは普通にある。
代替として民間奉仕(Zivildienst)を選ぶことも可能で、選択者が増えている傾向がある(推定)。
核シェルターの整備率
スイス政府の目標は「国民全員分の核シェルター定員を確保する」こととされており、実際にほぼ100%に近い水準が達成されているとされる(出典:スイス連邦民間防衛庁 BABS)。住宅を建設する際に核シェルター設置が義務付けられていた時代があり(現在は要件が緩和)、各家庭・地域に分散したシェルター網がある。
シェルターの多くは普段は地下倉庫や駐車場として使われており、有事の際に活性化する設計だ。
「中立」でも備える論理
「中立国なのに軍や核シェルターが必要なのか」という問いに対し、スイス人の多くは「中立は武力によって守られている」と答える。無防備な中立は実現できない、という考え方だ。
第二次世界大戦中にスイスが侵略されなかった理由の一つとして、山岳地形に加えて要塞化されたインフラと軍事力があったとされる(歴史的解釈は諸説あり)。「隠れ要塞国家」という表現がされることもある。
在住外国人への影響
外国籍の在住者は原則としてスイスの徴兵義務の対象外だ。ただしスイス国籍を取得した場合(年数要件あり)は、年齢制限内であれば徴兵義務が生じる可能性がある。二重国籍の問題とも絡む。
核シェルターについては、在住外国人にも最寄りの公共シェルター(Schutzraum)が割り当てられる仕組みになっている(推定)。住民として防衛インフラの対象に含まれる。
中立という言葉の背後に、これだけの準備があるという事実は、スイスという国家の設計思想の核心を示している。