PostFinanceで口座開設——スイスの郵便局が銀行だった時代の名残
スイスのPostFinanceは郵便局発祥の銀行サービス。UBSやCredit Suisseより手数料が安く、在住外国人にも開設しやすい。口座開設手順と注意点。
この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。
スイスで銀行口座を開くとき、最初の選択肢はUBSでもCredit Suisseでもない。PostFinance——郵便局の銀行だ。
スイスの郵便局(Die Post / La Poste)は、19世紀から郵便為替・貯金サービスを提供してきた。その金融部門が独立したのがPostFinanceで、現在もスイス連邦が100%出資する国営企業だ。全国約2,000カ所の郵便局・ATMネットワークがそのまま使える。
なぜ在住外国人に向いているのか
UBSやZürcher Kantonalbankは、口座維持手数料がCHF 5〜10/月(約850〜1,700円)かかるプランが多い。PostFinanceの基本口座(PostFinance Basic)はCHF 5/月(約850円)だが、25歳以下は無料。
口座開設に必要なのは、Bの滞在許可証(Aufenthaltsbewilligung B)と住民登録の証明だけだ。一部の大手銀行は最低預入額を設定しているが、PostFinanceにはそれがない。
開設手順
- オンラインで事前申し込み: PostFinanceのサイトから申請フォームを送信
- 郵便局で本人確認: パスポートとB許可証を持参。最寄りの郵便局で手続き可能
- デビットカード到着: 約1週間でPostFinance Cardが届く
- e-financeの設定: オンラインバンキングのアクティベーション
全体で2週間あれば完了する。英語対応のスタッフがいる支店は限られるが、申請フォーム自体は英語・フランス語・イタリア語にも対応している。
注意点
PostFinanceは「銀行」ではなく「決済機関」に分類されている。預金保険の対象外だが、国が100%出資しているため実質的なリスクは極めて低い。
もう一つ、TWINTとの連携が便利だ。TWINTはスイス版のモバイル決済で、PostFinanceの口座と直接紐付けられる。スーパーでの支払い、友人への送金、駐車場の精算まで、スイスの日常生活でTWINTは必需品だ。
他の銀行との使い分け
長期的にスイスに住む場合、PostFinanceだけでは足りない場面がある。住宅ローン(Hypothek)はPostFinanceでも扱っているが、カントナルバンク(州立銀行)の方が金利条件が良いことが多い。
給与の受取口座としてはPostFinanceで十分だが、貯蓄や投資にはUBS、Swissquote、Yuh(PostFinanceとSwissquoteの合弁によるモバイルバンク)を併用するパターンが一般的だ。Yuhは口座維持手数料が無料で、株式やETFの取引にも対応している。
スイスの銀行選びは「どこが一番金利が高いか」ではなく「どこが日常生活に最も摩擦が少ないか」で決まる。PostFinanceは、郵便局が全国にある限り、その摩擦を最小化する選択肢であり続ける。