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グレッシャーエクスプレスに乗って気づくこと:スイスの鉄道が「体験」として設計されている理由

グレッシャーエクスプレス(氷河特急)はマッターホルン麓のツェルマットからサンモリッツまでを結ぶ観光列車だ。時速35kmで8時間かけて走るこの列車が「遅さ」を売りにできる理由を考える。

2026-06-12
グレッシャーエクスプレススイス鉄道観光列車旅行

この記事の日本円換算は、1CHF≒178円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

「世界一遅い急行列車」と呼ばれることがある。グレッシャーエクスプレス(Glacier Express)は、マッターホルン麓のツェルマットから氷河高原のサンモリッツ(またはダヴォス)までの約290kmを、8時間かけて走る(出典:Glacier Express公式)。

平均時速は35km程度で、新幹線ならとっくに着いている距離だ。それでも座席は事前に予約が必要で、夏は満席が続く。

なぜ遅いことが価値になるか

速さを売らない列車は、景色を売る。ツェルマットの眺望、ランドヴァッサー橋の曲線(世界遺産・レーティッシュ鉄道)、オーバーアルプ峠の雪景色——これらを窓から見ながらゆっくり移動することが、この列車の本質だ。

全面ガラスのパノラマウィンドウ、バーサービス、テーブルで食事できる設計——観光インフラとして設計された空間になっている。

在住者と観光客の使い分け

在住日本人がグレッシャーエクスプレスに乗るのは、だいたい日本から親や友人が来たときだ。「スイスに住んでいるから一度は乗ってみよう」という経験として位置づけられる。

日常の移動手段としては使わない。在住者が普段使うスイス鉄道(SBB)は、定時で速く、頻度が高い。

SBBの日常としての優秀さ

スイスの鉄道インフラは実用的な面で世界水準だ。主要都市間は30分〜1時間に1本以上の頻度で列車が走り、乗り換えのタイミングが精密に設計されている(トラクト接続)。

バス・トラム・鉄道が一枚のパスで乗り放題になるGA(Generalabonnement)という年間パスがある。2等GAは年間3,860CHF(約68万円)程度(2024年参考価格、出典:SBB公式)。高額だが、毎日電車通勤する人にとっては元が取れる計算になる場合がある(推定)。

ハーフタックス(半額定期)という現実的選択

GAより手頃なのがハーフタックス(Halbtax Abo)だ。年間185CHF(約33,000円)を払うと、全国の鉄道・バス・ボートのほとんどが50%引きになる(出典:SBB公式)。スイスに住む外国人も購入可能で、「GAを買うほど移動しないが、旅行・観光を楽しみたい」人に広く使われる。

グレッシャーエクスプレスの窓から見るアルプスは、スイスの「見せ場」だ。しかしその列車を支えているのは、毎日粛々と時刻通りに動く普通の鉄道インフラだ。

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