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スイスに1,200以上ある公共水飲み場——水道水がミネラルウォーターより信頼される国

スイスの都市には無数の公共水飲み場(Brunnen)がある。水道水の品質がペットボトルを上回る国で、水はどう管理され、在住者はどう活用しているか。

2026-05-22
水道水水飲み場インフラ環境生活

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チューリッヒ市内だけで1,200以上の公共水飲み場がある。パリのウォレス噴水が約120基、東京23区の公園水飲み場が約2,400基であることを考えると、人口42万人の都市に1,200は異常な密度だ。

しかもスイスの水飲み場の水は、飲める。飲めない場合は「Kein Trinkwasser(飲料不可)」と明示される。表示がなければ飲料水——これがスイスのデフォルトだ。

なぜスイスの水道水は信頼されるか

スイスの水道水の約80%は地下水と湧き水から供給されている。アルプスの地層がフィルターになり、化学処理を最小限に抑えた「天然のろ過水」が蛇口から出てくる。

スイスの飲料水基準は、市販のミネラルウォーターの基準より厳しい項目がある。つまり制度上、蛇口の水の方がペットボトルより安全であり得る。レストランで「Hahnenwasser(水道水)」を注文しても嫌な顔はされない——ただし、ミネラルウォーターの方が利益率は高いので、積極的に勧められることもない。

在住者の水との付き合い方

スイスに住み始めると、ペットボトルの水を買う回数が激減する。マイボトルを持ち歩き、街中の水飲み場で補充する。ジョギング中、ハイキング中、通勤途中——水飲み場の位置を把握することが、スイス生活の基本スキルになる。

チューリッヒ市は全水飲み場の地図をオンラインで公開している。ベルン、バーゼル、ジュネーブも同様だ。

水の硬度という落とし穴

一つだけ注意点がある。スイスの水は地域によって硬度が大きく異なる。ジュネーブは軟水寄り(約120mg/L)だが、チューリッヒやベルンは硬水(300mg/L超)。硬水に慣れていない日本人は、最初の数週間で肌や髪の変化を感じることがある。

電気ケトルに白い石灰が付くのも硬水のサインだ。月に1回、クエン酸で洗浄する習慣をつけると長持ちする。

スイスの水飲み場は、単なるインフラではない。「公共空間は全員のもの」というスイスの設計思想が、水という最も基本的な資源に表れている。

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