ヴィンタートゥール——チューリッヒの隣にある「ちょうどいい」街
チューリッヒから電車20分のヴィンタートゥールは人口11万人の文化都市。美術館の密度が異常に高く、家賃はチューリッヒより2〜3割安い。この街に住む選択肢を紹介します。
この記事の日本円換算は、1CHF≒170円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CHF)の金額を基準にしてください。
チューリッヒ州で2番目に大きい都市ヴィンタートゥール(Winterthur)の人口は約11.5万人。チューリッヒ中央駅から電車で約20分という立地ながら、知名度は圧倒的に低い。だがこの街には、人口比で見ると異常な密度の美術館がある。
美術館の街
ヴィンタートゥールには17の美術館・博物館がある。人口11万人の街でこの数は、ヨーロッパの中小都市としても群を抜いている。
- オスカー・ラインハルト・コレクション(Museum Oskar Reinhart):印象派からポスト印象派まで、ルノワール・セザンヌ・ゴッホの作品を収蔵
- フォトミュージアム・ヴィンタートゥール:スイス最大の写真美術館
- クンストミュージアム・ヴィンタートゥール:近現代アートのコレクションが充実
なぜこんな小さな街に美術館が集中しているのか。19世紀後半、ヴィンタートゥールは繊維産業で栄えた工業都市で、裕福な実業家たちが個人コレクションを築き、街に寄贈した歴史がある。芸術のパトロン文化が街のDNAに組み込まれている。
生活コスト:チューリッヒとの差
ヴィンタートゥールの家賃はチューリッヒ中心部より2〜3割安い。3.5Zimmer(日本の2LDK相当)で1,500〜2,200CHF(約25.5万〜37.4万円)が目安。チューリッヒ中心部で同条件だと2,000〜3,000CHFは覚悟する必要がある。
スーパーマーケット(Migros、Coop)の価格はチューリッヒとほぼ同じだが、外食はやや安い傾向がある。ヴィンタートゥールの旧市街にはカフェやレストランが集中しており、ランチの平均は18〜25CHF(約3,060〜4,250円)程度。
チューリッヒへの通勤
チューリッヒ中央駅まで電車で約20分、ピーク時は10分間隔で運行している。SBBの月間定期(GA travelcardではなく区間定期Streckenabonnement)は約180CHF(約3.1万円)。
多くのヴィンタートゥール住民がチューリッヒに通勤しており、「チューリッヒで働いてヴィンタートゥールで暮らす」というパターンは珍しくない。帰宅後に旧市街を散歩して、週末は美術館を巡る——そういう生活ができるサイズ感の街だ。
旧市街と日常の質感
ヴィンタートゥールの旧市街(Altstadt)はコンパクトで、端から端まで徒歩15分ほど。中世の建物が残る石畳の通りにカフェ・本屋・小さなブティックが並んでいる。
毎週火曜と金曜に開かれるマーケット(Wochenmarkt)では、地元の農家が野菜・チーズ・パンを直売している。大都市のような華やかさはないが、生活に必要なものは一通り揃う。
子育て世帯にとっても環境は良い。公立学校の質はチューリッヒ州全体で均質で、自然も近い。トスタール(Tösstal)方面に15分車を走らせると、ハイキングコースに出られる。
チューリッヒの家賃に疲れた人、都市の利便性は維持しつつ少し静かな暮らしがしたい人にとって、ヴィンタートゥールは検討する価値のある選択肢だ。