中国の墓地が足りない——清明節と「死ぬのにも金がかかる」問題
中国の大都市では墓地の価格が住宅並みに高騰。1区画CNY 10万〜50万。清明節の墓参り文化と、死にまつわる経済的プレッシャーを解説。
この記事の日本円換算は、1CNY≒21円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CNY)の金額を基準にしてください。
上海の墓地1区画の価格は、CNY 100,000〜500,000(約210万〜1,050万円)。面積は1㎡前後だ。同じ面積で住宅の単価と比較すると、墓地のほうが高い地域もある。「死ぬのにも金がかかる(死不起)」という言葉が、冗談ではなく実感として語られている。
なぜ墓地が高いのか
中国の都市部では土地が国有で、墓地として使える面積が厳しく制限されている。需要に対して供給が絶対的に不足している。さらに、墓地の使用権は永久ではなく、多くの場合20年間の期限付きだ。期限が来ると更新料を支払う必要がある。
政府は火葬を推奨し、土葬を制限しているが、農村部では伝統的な土葬の慣習が根強い。都市部でも「立派な墓を建てることが親孝行」という価値観は簡単には変わらない。
清明節の大移動
毎年4月初旬の清明節(チンミンジエ)は、中国最大の墓参りシーズンだ。全国で約1億人以上が墓参りに移動するとされる。高速道路は渋滞し、鉄道は満席になり、墓地の周辺は人であふれる。
墓前で紙銭(死者に届くとされる紙の貨幣)を燃やし、食べ物や酒を供える。近年は環境保護の観点から紙銭の焚き火が制限され、代わりに造花やデジタル供養(スマホアプリで仮想の墓にお供えする)が広まりつつある。
新しい選択肢
墓地の高騰を受けて、樹木葬、海洋散骨、共同納骨堂などの選択肢が広がっている。上海市は海洋散骨に対してCNY 4,000〜6,000(約84,000〜126,000円)の補助金を出しており、利用者は年々増加している。
それでも「先祖の墓を持つこと」への執着は強い。清明節に墓参りに行けないことは、中国社会では親不孝の象徴とみなされかねない。
外国人として中国に住んでいると、清明節は連休として享受するだけかもしれない。しかし、同僚が「墓参りのために帰省する」と言ったとき、その背景にある文化的・経済的なプレッシャーを知っているかどうかで、関係性の深さが変わる。