TikTokのオリジナルは中国にある——抖音の1日6億人が見ている世界
TikTokの中国版「抖音(ドウイン)」は1日のアクティブユーザーが約6億人。中国国内では別アプリとして動いており、コンテンツもアルゴリズムも異なる。
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TikTokが世界で10億人のユーザーを持つプラットフォームだというのは、多くの人が知っている。しかしTikTokが「抖音(ドウイン)の海外版」であって、中国国内では全く別のアプリとして存在していることを知らない人は多い。
抖音のDAU(1日のアクティブユーザー数)は約6億人。中国のスマートフォンユーザーの約半数が、毎日このアプリを開いている計算だ。
TikTokと抖音は何が違うのか
データは完全に分離されている。中国の法律(サイバーセキュリティ法)により、中国国内のデータを海外サーバーに転送することは原則禁止されている。そのため抖音のコンテンツはTikTokに流れず、逆もまたしかりだ。
アルゴリズムの方向性も異なる。TikTokがエンターテインメント寄りのレコメンドなのに対し、抖音はEC(電子商取引)との統合が深い。動画を見ながら商品をタップして購入する「兴趣电商(興味EC)」が抖音の売上の中核だ。
ライブコマースは抖音の主戦場で、個人の配信者がリアルタイムで商品を販売する。トップの配信者は1回のライブで数億元(数十億円)を売り上げることもある。
中国在住者の生活への影響
抖音は動画プラットフォームであると同時に、生活インフラでもある。レストラン検索、クーポン取得、ホテル予約、タクシー呼び出しまで抖音内で完結する。大众点评(ダーヂョンディエンピン)や美团(メイトゥアン)と機能が重複しつつある。
外国人が抖音アカウントを作るには、中国の携帯電話番号が必要だ。身分証明書(パスポート)との紐付けも求められる。実名認証をしないと、コメントやライブ配信の一部機能が制限される。
中国語が読めなくても、アルゴリズムが自分の興味に合う動画を次々と表示してくれるので、言語学習ツールとして使う外国人もいる。ただし1日の視聴時間が2時間を超えると「休憩しませんか」という通知が出る。14歳以下は1日40分に制限される。
抖音と検閲
抖音のコンテンツは中国のインターネット規制の対象だ。政治的に敏感な内容、暴力的な映像、「低俗」と判断されるコンテンツは自動的にフィルタリングされる。AIによる審査と人間の審査員による二重チェック体制が敷かれている。
外国人ユーザーが政治的な内容を投稿した場合、アカウントが制限される可能性がある。日常的な使い方——レストランの動画を見る、旅行先を探す、中国語のリスニング練習に使う——であれば問題になることはまずない。
抖音で流行しているコンテンツを同僚との会話のネタにすると、距離が縮まる。「最近抖音で见到……」は、中国の職場での雑談の定番の入り方だ。
中国のインターネットは「壁の中」にある。その壁の中で、6億人が毎日見ているものを知ることは、この国の今を理解する最も手っ取り早い方法かもしれない。