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中国の暖房境界線——「秦嶺・淮河ライン」の北は暖房あり、南はなし

中国では地理的な境界線で暖房の有無が決まる。冬の上海が東京より寒く感じる理由と、在住者の防寒対策を解説します。

2026-05-12
中国暖房生活気候

この記事の日本円換算は、1CNY≒21円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CNY)の金額を基準にしてください。

上海の冬は東京とほぼ同じ気温だ。でも体感は東京よりずっと寒い。理由は単純で、上海のマンションには集中暖房がない。室温が外気温に近づいていく中で、ダウンジャケットを着たまま夕食を食べる。これが中国南方の冬の現実だ。

秦嶺・淮河ラインとは

中国には「秦嶺山脈と淮河を結ぶ線」を境に、北側と南側で暖房政策が分かれるというルールがある。1950年代に策定された制度で、この線の北側には政府主導の集中暖房(集中供暖)が整備される。南側にはない。

北京・天津・ハルビン・瀋陽・西安などは北側。暖房期間(毎年11月中旬〜3月中旬)になると、地域の暖房ステーションから各建物にお湯が送られ、ラジエーターを通じて部屋が暖まる。暖房費は面積ベースで年間20〜30元/平米(約420〜630円)。80平米の部屋なら年間1,600〜2,400元(約33,600〜50,400円)だ。

上海・杭州・成都・重慶・武漢・南京は南側。集中暖房は原則ない。

南方の冬がつらい理由

上海の1月の平均気温は3〜5度。東京の同月とほぼ同じだ。しかし東京のマンションにはエアコンがあり、気密性も高い。上海の古い住宅は断熱性が低く、窓の隙間から冷気が入る。エアコンがあっても暖房効率が悪く、電気代だけが膨らむ。

湿度が高いことも体感温度を下げる。上海の冬は「湿冷(シーレン)」と呼ばれ、乾燥した寒さの北京(干冷)よりも骨に染みると言われる。北京から上海に転勤した中国人が「上海の方が寒い」と嘆くのは定番の話題だ。

在住日本人の防寒対策

暖房なしの冬を乗り切るために、在住者は様々な工夫をしている。

エアコン暖房: 最も一般的だが、電気代が月500〜800元(約10,500〜16,800円)に跳ね上がる。天井付近が暖まり、足元が寒いままになりやすい。

オイルヒーター・電気ストーブ: 部屋全体を暖めるのは難しいが、デスク周りやベッド周りのスポット暖房として使える。タオバオで200〜500元(約4,200〜10,500円)で購入可能。

電気毛布: 中国の冬の必需品。就寝30分前にスイッチを入れておくと、布団が温まった状態で眠れる。50〜150元(約1,050〜3,150円)と安い。

ダウンジャケット室内着用: 冗談ではなく、家の中でダウンジャケットを着ている人は多い。特に古い建物では合理的な選択だ。

変わりつつある南方の暖房事情

近年、南方でも暖房設備を導入するマンションが増えている。新築の高級物件では、床暖房やセントラルヒーティングが標準装備されることもある。設置費用は30,000〜80,000元(約63万〜168万円)と高額だが、快適さは段違いだ。

また、杭州や合肥など一部の都市では、地域単位で集中暖房の試験導入が始まっている。「南方にも暖房を」という声は毎年冬になるとSNSで話題になり、政府も無視できなくなっている。

物件選びの最優先事項

中国南方に住む予定があるなら、物件の暖房設備は家賃や立地と同じくらいの優先度で確認する。床暖房付きの物件と暖房なしの物件では、冬の生活の質が根本的に違う。11月の内見で「今は暖かいから大丈夫」と思っても、1月には後悔する。

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