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30階のベランダでネギを育てる人々——中国の高層マンション菜園文化

中国の都市部では高層マンションのベランダで野菜を栽培する人が驚くほど多い。都市化と農村の記憶が交差する、ベランダ菜園の背景と実態。

2026-05-28
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中国のマンションの高層階から下を見ると、向かいのビルのベランダにプランターが並んでいる。ネギ、唐辛子、トマト、空心菜。30階でも40階でも、野菜を育てている。

中国のベランダ菜園は日本の「ベランダガーデニング」とは違う。おしゃれな趣味ではなく、「自分で食べるものは自分で作る」という実用的な行動だ。都市化が急速に進んだ中国では、農村出身の住民がマンションに移り住んでも土に触れる習慣を手放さなかった。

なぜ野菜を育てるのか

食の安全への不安が根底にある。2008年のメラミン混入粉ミルク事件以来、中国の消費者は食品の安全性に対して構造的な不信感を持っている。市場で買う野菜の農薬残留を心配するよりも、自分で育てた方が安心——という判断だ。

もう一つは経済的な理由。中国の都市部ではネギ1束がCNY 3〜5(約63〜105円)するが、ベランダで育てれば種代のCNY 2〜3(約42〜63円)で何度も収穫できる。特に退職した高齢者にとって、ベランダ菜園は節約と生きがいを両立する活動だ。

管理組合との衝突

しかしベランダ菜園はトラブルの種でもある。水やりの水が階下のベランダに垂れる、土が排水溝を詰まらせる、虫が発生する——管理組合(物业管理)が「ベランダでの栽培禁止」を通達するマンションも少なくない。

高級マンション(小区)では明確に規約で禁止されていることが多いが、一般的な住宅地では暗黙の了解で続いている。「うちのベランダのことは自分で決める」という意識は、集合住宅であっても根強い。

外国人としての付き合い方

隣人がベランダで野菜を育てていて、収穫したネギやトマトを分けてくれることがある。これは中国の近所付き合いの入口になりやすい。受け取って「好吃(おいしい)」と伝えれば、距離が一気に縮まる。

屋上菜園とコミュニティ農園

ベランダよりスケールが大きいのが屋上菜園(楼顶菜园)だ。古いマンションの屋上にプランターを並べ、住民で区画を分け合う。自治体が公認しているケースもあれば、住民の自発的な活動のケースもある。

一部の新築マンション開発では、屋上にコミュニティ農園を設計段階から組み込む例も出てきた。深圳や成都の一部の高級マンションでは、住民1世帯あたり2〜5平米の区画が割り当てられ、月額CNY 50〜100(約1,050〜2,100円)で利用できる。

都市農業を「食の安全」「コミュニティ形成」「メンタルヘルス」の3つの文脈で捉える動きは、中国でも広がりつつある。

中国の都市は世界で最も急速に垂直方向に伸びた。しかしコンクリートの箱の中でも、人は土を求める。30階のネギは、都市化のスピードに人間の習慣が追いついていないことの、小さな証拠だ。

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