中国のネットで「河蟹」と書いたら検閲の話をしている——隠語文化とグレートファイアウォール
中国のインターネットでは検閲を回避するための隠語が日々生まれている。「河蟹」「翻墙」「404」などの表現と、ネット文化の独自進化。
この記事の日本円換算は、1CNY≒21円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CNY)の金額を基準にしてください。
中国のSNSで「河蟹(ヘーシエ)」という言葉を見かけたら、それは上海蟹の話ではない。「和谐(ヘーシエ、調和)」の同音異義語で、ネット検閲によって削除されることを意味する。「この投稿は河蟹された」=「この投稿は検閲で消された」。
中国のインターネットでは、直接的な表現が使えない話題が存在する。ユーザーたちはそれを回避するために、膨大な量の隠語(暗语)を生み出し続けている。
代表的な隠語
「翻墙(ファンチャン)」は「壁を越える」という意味で、VPNを使ってグレートファイアウォールを迂回することを指す。「梯子(ティーズ、はしご)」はVPNそのものの隠語だ。
「404」はHTTPエラーコードだが、中国では「政府に消されたコンテンツ」の代名詞になっている。「ある記事が404になった」と言えば、検閲で削除されたという意味だ。
「赵家人(ジャオジアレン、趙家の人)」は魯迅の小説『阿Q正伝』に由来し、権力層を指す。直接的に「共産党幹部」と書くと削除されるため、文学作品からの引用で代替する。
隠語はなぜ進化し続けるのか
検閲はAIによる自動検出が主力だ。特定のキーワードがフィルタリングされると、ユーザーは新しい表現を発明する。当局がそれを検出すると、さらに新しい表現が生まれる。この「いたちごっこ」が10年以上続いている。
画像に文字を埋め込む、ピンインの頭文字だけで書く(例: YYDS=永远的神=永遠の神=最高)、絵文字で文脈を伝える——手法は年々高度化している。
外国人が知っておくべきこと
中国在住の外国人がWeChatで発信する内容も、検閲の対象になりうる。VPNの話題、政治的にセンシティブな話題を中国のSNSで発信するのは避けたほうがいい。アカウントの凍結や、最悪の場合は在留資格に影響する可能性もゼロではない。
一方で、日常会話やビジネスのやり取りが検閲で問題になることはまずない。中国のネット検閲は「政治的な表現」に焦点を当てており、「今日のランチは何を食べた」レベルの内容には介入しない。
隠語文化は抑圧の産物だが、同時に中国語の創造性の証でもある。規制が厳しくなるほど、言語は柔軟に変形する。中国のインターネットは、世界のどこよりも言葉の進化速度が速い空間かもしれない。