中国の高齢化は日本より速い——2035年に人口の30%が60歳以上になる国で何が起きるか
中国の高齢化速度は日本を上回る。2035年には60歳以上が4億人を超える見込み。一人っ子政策の遺産、年金制度の限界、在住外国人への影響を構造から解説。
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2023年、中国の出生数は約902万人。2016年の1,786万人から7年で半減した。日本が出生数を半減させるのに30年かかったことを考えると、中国の少子化は新幹線ではなくリニアの速度で進んでいる。
2035年には60歳以上の人口が4億人を超えると予測されている。4億人。日本の総人口の3倍以上の高齢者が、一つの国に存在することになる。
一人っ子政策の遺産
1979年から2015年まで続いた一人っ子政策は、36年間で約4億人の出生を抑制したとされる。この政策は人口増加を止めることには成功したが、代償として「4-2-1構造」を生み出した。4人の祖父母、2人の親、1人の子ども。1人の若者が6人の高齢者を支える構造だ。
2016年に二人っ子政策、2021年に三人っ子政策へ緩和されたが、出生率は回復していない。若い世代は「生みたくない」のではなく「生めない」。住宅費、教育費、競争圧力が高すぎるのだ。
年金の格差
中国の年金制度は都市部と農村部で別体系だ。都市職工基本養老保険(城镇职工基本养老保险)は企業と従業員が折半で拠出し、退職後に月CNY 3,000〜5,000(約6.3万〜10.5万円)程度を受給できる。
一方、農村部の城乡居民基本养老保险の基礎年金は月CNY 100〜200(約2,100〜4,200円)程度。これだけでは生活できないため、農村の高齢者は子どもからの仕送りに依存するか、70歳を超えても働き続ける。
在住外国人への影響
高齢化は直接的には外国人の生活に影響しないように見える。だが労働力不足はサービス業の質と価格に波及する。家事代行(阿姨)の時給は5年前の2倍になった都市もある。
医療面では、公立病院の混雑がさらに悪化する可能性がある。高齢患者が増えれば、外国人クリニックへの需要も高まり、価格が上がる力学が働く。
中国の高齢化は、日本の30年遅れの追体験ではない。規模が違う。日本の高齢化は「縮小していく社会」の問題だったが、中国のそれは「まだ巨大なまま老いていく社会」の問題だ。解決策も日本とは異なるものになるだろう。
この変化の渦中にいることは、在住者にとってリスクでもあり、歴史の最前列で観察できる機会でもある。