中国の「トイレ革命」——10年で激変した公衆トイレ事情と残る地域差
中国では2015年から政府主導の「トイレ革命」が進行中。都市部と地方で大きく異なるトイレ事情の現状を解説します。
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中国のトイレは汚い——10年前ならその認識は正しかった。ドアのないニーハオトイレ、溝が掘ってあるだけの共同便所。しかし2015年に習近平国家主席が「トイレ革命(厕所革命)」を宣言して以来、状況は劇的に変わった。少なくとも都市部では。
トイレ革命の成果
政府は2015年から2020年までの第一期で、全国に約12万ヶ所の公衆トイレを新設・改修した。第二期(2021〜2025年)ではさらに農村部への展開を加速させている。
北京・上海・深圳などの大都市では、公衆トイレの質は日本のそれに近づいている。水洗式は当然として、温水洗浄便座、エアコン、Wi-Fi、USB充電ポート、顔認証のトイレットペーパー自動供給機まで備えた「スマートトイレ」も登場した。
ショッピングモールやオフィスビル、新しい地下鉄駅のトイレは清潔で、日本人が違和感なく使えるレベルにある。
それでも残る地域差
問題は地方だ。観光地でも郊外に出ると、昔ながらのトイレに遭遇することがある。農村部では水洗化自体がまだ進んでいない地域もある。
在住外国人が出張や旅行で地方都市や農村を訪れる際は、以下を覚えておくと助かる。
- ティッシュペーパーは常に携帯: 公衆トイレに紙が備えられていないことがある
- ウェットティッシュも有効: 手洗い場の石鹸がない場合も
- しゃがみ式が多い: 和式トイレに慣れている日本人なら問題ないが、洋式しか使ったことがない人は戸惑う
- 流さないで横のゴミ箱に捨てる: 配管が細い建物では、トイレットペーパーを流すと詰まるため、ゴミ箱に捨てるルールの場所がある
トイレを探す方法
都市部ではスマートフォンのアプリ「城市公厕」や百度地図で最寄りの公衆トイレを検索できる。表示される情報にはトイレの種類(洋式/しゃがみ式)、清潔度の評価、バリアフリー対応の有無が含まれていることもある。
緊急時の味方はショッピングモールとホテルのロビーだ。特にホテルの1階のトイレは清潔で、宿泊者でなくても利用できることが多い。スターバックスやマクドナルドも外国人にとっての安心スポットだ。
紙をめぐる攻防
一時期、北京の天壇公園の公衆トイレでトイレットペーパーの盗難が相次いだ。対策として導入されたのが「顔認証ペーパー供給機」だ。機械の前に立つと顔がスキャンされ、60cmのペーパーが出てくる。同じ顔で9分以内に再取得はできない仕組みだ。
この話は「中国のテクノロジー vs. 公共マナー」の象徴としてよく引き合いに出される。技術で行動を制御するアプローチは、良くも悪くも中国らしい。
在住者の実感
上海や北京に住んでいる限り、トイレで困ることはほぼなくなった。オフィス、モール、地下鉄——日常動線上のトイレは十分な水準だ。ただし、タクシーの長距離移動中や高速道路のサービスエリアでは、まだ「覚悟」が必要な場面がある。
トイレ事情は国の発展段階を映す鏡だ。中国のトイレは10年で劇的に改善された。あと10年もすれば、「中国のトイレは汚い」という印象自体が過去のものになっているかもしれない。