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象棋と公園文化——中国将棋が路上で指される理由

中国の公園では早朝から老人たちが象棋(中国将棋)を指している。日本の将棋とは異なるルール・駒の配置と、象棋が公共空間の社会的インフラになっている構造を解説。

2026-05-08
中国象棋公園文化ボードゲーム

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中国の公園を朝7時に散歩すると、石のテーブルを囲む人だかりに出くわす。中央で2人が駒を動かし、周囲の5〜6人が腕組みをして黙って見ている。時々、見物人が「車走ってないだろ」と口を挟む。象棋(シャンチー、中国将棋)の風景だ。

象棋の基本

象棋は2人対戦のボードゲームで、9×10の盤面に16枚ずつの駒を配置する。日本の将棋と同じ祖先(インドのチャトランガ)から派生したとされるが、ルールはかなり違う。

最大の違いは「取った駒を使えない」こと。日本将棋の持ち駒ルールは世界的に見ると特殊で、象棋では取った駒はゲームから除外される。チェスと同じだ。

盤面の中央には「河(楚河漢界)」が引かれている。これは秦末の楚漢戦争に由来し、一部の駒は河を越えられない。象(象/相)は自陣から出られず、士(仕/士)は宮殿(九宮格)の中しか動けない。

なぜ公園で指すのか

中国の都市部における公園は、日本人が想像する「散歩の場所」以上の機能を持っている。退職後の高齢者にとって、公園は社交・運動・娯楽の中心地だ。太極拳、広場舞(ダンス)、鳥の散歩、そして象棋——これらが公園の定番アクティビティになっている。

象棋が屋外で指される理由は単純で、盤と駒さえあればどこでもできるからだ。石や大理石のテーブルが公園に設置されていることも多い。エアコンのない夏でも、木陰のベンチで風に当たりながら指す方が快適だという理由もある。

「観棋不語」の建前

象棋には「観棋不語真君子(碁を見て語らぬは真の君子)」という格言がある。見物人は口を挟むなという意味だ。しかし現実には、見物人がああだこうだと手を批評し、時には対局者と口論になる。この「建前と本音のギャップ」も含めて公園象棋の風物詩だ。

在住外国人と象棋

象棋のルールを覚えると、公園の老人たちとのコミュニケーションツールになる。中国語が流暢でなくても、盤面を挟めば会話が始まる。「外国人が象棋を知っている」というだけで歓迎される場面は多い。

駒には漢字が書かれているので、読めないと始まらない。將(帥)・士(仕)・象(相)・車・馬・炮・兵(卒)の7種類を覚えるところから始まる。ルールは30分で理解できるが、上達するには年単位の時間がかかる——日本の将棋と同じだ。

タオバオで象棋セットはCNY 20〜50(約420〜1,050円)程度で買える。まず駒の漢字と動きを覚えて、公園に出向いてみるのが最速の上達法だ。

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