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夜8時から始まる経済——中国の夜市とナイトエコノミー政策の実態

中国政府が推進するナイトタイムエコノミー政策で、夜市は「屋台の集まり」から「都市戦略」に変わった。敦煌・杭州・成都の事例と、夜市経済が在住外国人の生活に与える影響を解説。

2026-05-06
中国夜市ナイトエコノミー経済政策屋台

この記事の日本円換算は、1CNY≒21円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CNY)の金額を基準にしてください。

甘粛省敦煌市の夜市を2025年1月〜8月に訪れた観光客は313万人。前年同期比18%増。敦煌は人口約20万人の都市だ。つまり人口の15倍以上の人間が、8ヶ月間で夜市に押し寄せた計算になる。

「夜間経済」という国策

中国の夜市は、もはや屋台が自然発生的に並ぶ場所ではない。国務院が「夜間経済(ナイトタイムエコノミー)」を消費喚起策の柱に位置づけて以来、各都市が競うように夜間消費の促進政策を打ち出している。

具体的には、夜間営業を行う商業施設への補助金、照明・インフラ整備、深夜交通の延長運行といった施策だ。杭州市は「ナイトエコノミーブランド」の育成に力を入れ、わずか1キロの通りに飲食・物販・文化体験を凝縮した夜間消費エリアを設計した。

これは「市民が自然と集まる場所」ではなく、「集まるように設計された場所」だ。

夜市の新しい形態

従来の夜市は食べ歩きが中心だった。現在は3つの方向に進化している。

文化融合型: 敦煌夜市では、敦煌壁画をモチーフにした建築、スマート照明、文化的意匠を施した路面舗装が導入されている。観光地の歴史と夜市を融合させる手法だ。

健康・学習型: 甘粛省では「健康市」「求職市」「学習市」など、食べ物以外のテーマを持つ夜間マーケットが出現している。夜市の概念そのものが拡張されている。

デジタル決済型: どんな小さな屋台でもQRコード決済が使える。現金を受け取らない屋台も珍しくない。WeChat PayかAlipayがないと、串焼き1本買えない場面がある。

屋台メシの実力

政策の話はさておき、中国の夜市で食べるものは安くてうまい。

  • 烤串(カオチュアン/串焼き): 羊肉・牛肉・野菜の串。1本2〜5CNY(約42〜105円)
  • 臭豆腐(チョウドウフ): 揚げた臭豆腐にタレをかける。1皿10〜15CNY(約210〜315円)
  • 煎餅果子(ジェンビングオズ): 中国式クレープ。卵・薄餅・油条を重ねる。1個8〜15CNY(約168〜315円)
  • 冰粉(ビンフェン): 成都名物の冷たいゼリー状デザート。1杯5〜10CNY(約105〜210円)

1人あたり30〜60CNY(約630〜1,260円)で満腹になる。レストランで食べるより圧倒的に安い。

在住外国人としての楽しみ方

夜市は中国語がほとんどできなくても楽しめる数少ない場所だ。指差しで注文し、QRコードで支払い、その場で食べる。会話の必要がほぼない。

ただし、衛生面は自己責任。屋台によって差が大きい。人が並んでいる屋台は回転が速く、食材が新鮮な傾向がある。これは万国共通の原則だ。

夜9時を過ぎても街が明るく、人が動いている。日本の「シャッター商店街」を見慣れた目には、夜市の熱気はそれ自体が一つの文化に見える。中国の都市は、昼と夜で別の顔を持っている。

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