夜市の中国——地方屋台が映す食の地域多様性
北京の護国寺小吃から西安の回民街、成都の春熙路、重慶の解放碑まで——中国の夜市は都市ごとに顔が違う。屋台文化が映す地域のアイデンティティと、夜市が変化しつつある現在。
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夜の10時、成都の春熙路(チュンシールー)周辺を歩く。道の両側に屋台が並び、鍋に赤い油が煮立ち、串に刺さった肉が炙られ、麻辣(マーラー)の香りが立ち込める。客は路上に立ったまま、あるいは折りたたみ椅子に腰を下ろして食べている。
これが中国の夜市の原型だ。
中国の屋台文化は都市によって大きく異なる。西安の回民街(フイミンジエ)は清真(ハラール)料理が中心で、ビャンビャン麺・肉夾饃(ロウジャーモー)・羊肉串が名物だ。重慶では火鍋が主役で、街中のたき火のような鍋が深夜まで燃えている。
北京の「小吃(シャオチー)」文化は老北京の伝統を守る形で存在する。豆汁(ドウジー)・焦圈・驴打滚など、今の若い世代にはなじみが薄くなりつつある伝統食が、護国寺小吃などで提供されている。
近年、中国の多くの都市で屋台の整理・移転が進んだ。都市美化・衛生管理・交通整備の名目で、路上屋台が排除されたエリアは多い。「城管(チョングアン、都市管理局)」による屋台の撤去は社会的な摩擦を生むテーマでもある。
2020年のコロナ禍後、政府は屋台経済の許可に柔軟な姿勢を示した時期があり、「地摊経済(屋台経済)」が雇用創出として一時的に注目された。ただし衛生・景観規制の実施は地域・担当者によってばらつきがある。
TikTok(抖音)やREDノート(小红书)での食べ物動画の流行は、全国の「名物屋台」の存在を知る手がかりになっている。SNSで話題になった食堂・屋台に長蛇の列が生まれる現象は、今の中国グルメ文化の一面だ。
「この路地のこの屋台でしか食べられない」という体験は、観光消費を超えた意味を持つ。夜市は中国の地方文化が最も直接的に味として現れる場所だ。