猫が犬を逆転した——中国ペット経済8,000億元市場の構造
中国のペット市場は2025年に8,114億元(約17兆円)規模に達する見通し。猫の飼育頭数が犬を上回り、大型犬は都市部で飼育禁止。急成長する中国ペット経済の内情と、在住外国人のペット事情。
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中国で飼われている猫は約1億頭、犬は約8,800万頭。猫が犬を逆転した。日本でも猫の飼育頭数が犬を上回っているが、中国の場合、逆転の理由には都市政策が深く絡んでいる。
大型犬を飼えない都市
北京市の規定では、重点管理区(市中心部)で成犬時の体高35cmを超える犬の飼育が禁止されている。ドーベルマン、セント・バーナード、グレート・デーン、マスティフといった犬種はリストで明確に除外されている。上海・広州・深圳など他の大都市にも類似の規制がある。
犬の飼育には登録が義務づけられ、ワクチン接種・マイクロチップ埋め込み・写真撮影が必要だ。済南市では2017年から犬の「信用スコア」制度を導入しており、登録時に12ポイントが付与され、リード未装着やフン放置などの違反1回につき3ポイントが減点される。ポイントがゼロになると犬を没収される。
こうした規制環境の中で、「手間がかからず、散歩義務がなく、マンションの面積を問わない」猫の人気が急上昇した。都市生活と規制の両方が、猫優位の市場構造を作っている。
17兆円市場の内訳
ジェトロの報告によると、中国のペット経済産業の規模は2022年に4,936億元(約10.4兆円)に達し、前年比25.2%増。2025年には8,114億元(約17兆円)に達する見通しだ。2015年から2024年にかけて、都市部の犬猫消費市場は年平均13.3%の成長率を維持している。
消費の構成比を見ると、ペットフードが全体の52.3%を占め、次いでペット医療、グッズ・用品と続く。アリババやJD.comといったテック大手もペット市場に参入しており、スマート給餌器・自動トイレ・ペット用IoTデバイスなどのハイテク製品が伸びている。
ペットカフェとペット病院
中国の都市部では猫カフェ・犬カフェが急増している。1回の利用料は30〜80CNY(約630〜1,680円)程度。ペットを飼えないマンション住まいの若者が、猫と触れ合う場として利用する。
ペット病院の料金は日本と比べてやや安いが、都市部では上昇傾向だ。基本的な健康診断で200〜500CNY(約4,200〜10,500円)、避妊・去勢手術で800〜2,000CNY(約16,800〜42,000円)が目安。外国語対応の動物病院は上海・北京に数軒ある程度で、ほとんどは中国語のみだ。
外国人がペットを飼う場合
中国で外国人がペットを飼うにあたって、いくつか注意点がある。
持ち込み: 日本から犬・猫を持ち込む場合、中国の検疫要件を満たす必要がある。マイクロチップ、狂犬病ワクチン接種証明、抗体検査証明が必要で、手続きに数ヶ月かかる。在中国日本国大使館のウェブサイトで最新の要件を確認するのが確実だ。
退去時: 中国から日本にペットを連れ帰る場合も同様に厳格な検疫手続きが必要。少なくとも帰国の半年前から準備を始める必要がある。
賃貸: ペット可の物件は限定的だ。特にマンション(小区)の管理規約でペット禁止としている物件は多い。外国人向けのサービスアパートではペット可の物件もあるが、追加のデポジット(通常1ヶ月分)を求められるケースが一般的だ。
中国のペット市場は、少子化・単身世帯の増加・可処分所得の上昇という3つの構造変化に支えられて成長を続けている。「子どもの代わりに猫を飼う」という現象は、日本でも中国でも同じ方向を向いている。