中国の貧困脱出政策——1億人が「貧困」から抜け出した先にあるもの
中国政府は2021年に「農村の絶対的貧困の解消」を達成したと宣言した。数千万人規模の農村住民を移住・再定住させた政策の実態と、脱貧困後の生活の現実。
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2021年2月、中国政府は「農村の絶対的貧困の解消」を宣言した。中国の基準(1日の収入が一定水準以下と定義される農村貧困)に基づけば、過去10年間で約1億人が貧困ラインを超えたとされる。
この数字はどう作られ、脱貧困の先に何が待っているか——単純に「成功」と断言する前に、いくつかの側面を知っておく価値がある。
中国の脱貧困政策の主要手法のひとつが「易地扶貧搬遷(イーディー・フーピン・バンチェン)」だ。山岳・辺境の貧困農村から住民を平地・町に移住させ、新しい住宅・インフラ・職業訓練を提供するプログラムだ。数百万人規模が対象になったとされる(推定)。
新しい町には産業誘致・eコマース教育・縫製工場など雇用の場も整備された。旧来の農地は返上し、一括した農業法人経営(農業合作社)への統合が進んだ地域もある。
こうした政策への評価は複層的だ。「電気・水道・舗装道路が届き、子どもが学校に通えるようになった」という声がある一方で、「代々住んできた土地を離れさせられた」「新しい場所では仕事が合わず貧困が続く」という問題も報告されている。
貧困脱出の「達成」が行政の数字目標と連動していたため、数値を満たすために実態が伴わない移住が行われたケースも指摘されている。
「相対的貧困」は別の問題だ。中国の農村と都市の収入格差は依然として大きく、農村住民が絶対的貧困ラインを超えても、都市部の中産階級との差は縮まっていない。政府も2021年以降は「相対的貧困」の解消を次の課題として掲げており、農村振興政策(農村振興戦略)が続いている。
中国の農村に行くと、新築の集合住宅が建ち並ぶ「脱貧困村」の景色と、まだ整備が行き届いていない地域の景色が混在しているのを感じることがある。1億人の「達成」という数字と、そこに暮らす人々の日常の複雑さは、数字だけからは見えてこない。