「躺平(タンピン)」——中国の若者が不動産を諦めた先にある文化
上海・北京のマンション価格は年収の数十倍。手が届かないと分かった若者が「寝転がる(躺平)」文化を選ぶ。中国の不動産バブルと若い世代の価値観変化。
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上海の中心エリアのマンション価格は、2020年代前半の時点で1平米あたり平均10万元(約220万円)前後というエリアが多かった(推定、急速に変動しており要確認)。60平米の部屋で6,000万円(約280万CNY)という計算になる。
上海の平均的な月給が1〜2万元程度とすると(推定)、年収の数十倍だ。貯金だけで買えるわけがない。
「躺平(タンピン)」は2021年頃から広まった中国の若者スラングで、文字通り「寝転がる」という意味だ。高い目標を設定して必死に働いても報われないなら、最低限の生活に甘んじて「寝転がる」という選択——価値観の告白であり、社会システムへの抵抗でもある。
競争が激しい就職市場、上がり続けた不動産価格、親世代の「家を持ってこそ一人前」という価値観——これらへの疲弊が背景にある。「内巻(ネイジュアン)」(無意味な競争の激化)という言葉も同じ文脈で広まった。
不動産価格は2021〜2022年頃から調整局面に入り、特に地方都市・郊外エリアでは下落が見られた。恒大集団をはじめとする開発業者の経営危機が、購入者心理にも影響した。「買ったのに完成しない」「価値が下がった」という問題が現実になったことで、「不動産=安全資産」という認識は揺らいでいる。
政府は不動産市場の安定化のために様々な刺激策を講じてきたが、下落トレンドを完全に止めることはできていない。
躺平文化への政府の反応は複雑だ。当局は「努力を放棄する風潮は好ましくない」という立場を示すこともあるが、若者の感情を一方的に否定することで反発を招くリスクもある。
日本の「ゆとり世代」や欧米の「クワイエットクイッティング」と同様に、高コスト社会で過剰な競争に疲れた若者が「それほど頑張らない」という選択をする現象は、中国特有ではない。ただしその背景にある不動産価格の絶壁の高さは、中国特有のスケールを持っている。