春運——40億回の移動が起きる中国の民族大移動
旧正月前後に中国全土で起きる「春運」は、毎年数十億回規模の旅客移動が発生する世界最大の人口移動現象だ。高速鉄道・航空・高速バスが繁忙を極める2週間の実態。
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毎年旧正月(春節)前後の約40日間、「春運(チュンユン)」と呼ばれる中国全土の大移動が起きる。中国交通運輸部の発表によれば、春運期間中の旅客移動回数は年によって数十億回規模に達するとされている。
「春運」は文字通り「春の運輸」を意味し、世界最大の周期的人口移動現象として研究者からも注目されてきた。
春節は家族が一緒に過ごすべき時期という文化が根強い。農村から都市部に出稼ぎに来た「農民工(ノンミンゴン)」が、年に一度この時期に故郷へ帰る。上海・北京・深圳で働く数百万人が、同じタイミングで四川・河南・広東・湖南の実家へ移動する。
その規模が「春運」の混雑を生む。鉄道チケット(特に高速鉄道「高鉄」の指定席)は数週間前から争奪戦になる。12306(中国鉄路の公式チケットアプリ)でのアクセス集中はシステムを一時的に重くすることもあった。
高速鉄道(高鉄)の整備が進んだことで、春運の景色は変わった。かつては数十時間かかっていた移動が、数時間に短縮された。上海〜合肥が2時間以内、北京〜成都が約6〜8時間——これが可能になったことで、より多くの人が毎年帰省を選ぶようになった、という側面もある。
外国人居住者にとって、春節前後は「中国がほぼ停まる」時期だ。工場・レストラン・商店・サービス業の多くが春節休みに入る。2週間以上にわたって通常のサービスが利用できなくなることがあり、食料・日用品の事前備蓄や、外食できる店の事前確認が必要だ。
一方、春節期間中の都市部は人口が激減して静かになる。普段は混雑しているオフィス街が閑散とし、普段よりスムーズに移動できるという特別な体験でもある。
春運は中国社会の「都市と農村の断絶」の縮図でもある。1年のほとんどを都市で働き、春節だけ家族に会いに帰る——この移動の規模から、中国の出稼ぎ労働者の数とその生活の構造が浮かぶ。