中国の水不足——北京が直面する「水が足りない首都」の現実
中国の北部は慢性的な水不足に悩んでいる。南水北調(南から北へ水を引くプロジェクト)は世界最大の水利工事だが、需給ギャップは今も続く。中国の水問題の構造。
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中国の水資源は地域によって極端に偏っている。長江流域・南部は水が豊富だが、黄河流域・北部(北京・天津・河北・山東など)は慢性的な水不足だ。北部は中国の国土面積の約60%を占めるが、水資源量は全国の約20%以下とされる(推定)。
北京は水が少ない地域に人口2,000万人以上(推定)を抱える首都だ。
この問題に対する最大規模の解決策が「南水北調(ナンシュイベイディアオ)」プロジェクトだ。長江上流・漢江の水を北部へ送る大規模な水路・トンネル・ポンプ施設の建設で、東ルート・中央ルート・西ルートの3系統で構成される。2014年に中央ルートが稼働し、長江の水が北京まで届くようになった。
プロジェクトの総費用は数千億元規模(推定)で、世界最大級の水利インフラ事業のひとつだ。ただし沿線の住民移住(移転を余儀なくされた人々の数は数十万人以上とされる)や生態系への影響という課題も指摘されている。
北京の地下水位は数十年にわたって低下し続けてきた。工業・農業・都市用水の需要が地下水の自然涵養速度を上回って採水が続いた結果だ。南水北調の稼働後、北京の地下水位はわずかに回復しているという報告もあるが、構造的な問題は解消されていない。
農業用水の節水技術(点滴灌漑など)の普及や、工業廃水のリサイクル技術の向上が対策として進んでいるが、人口・農業規模に見合った改善には時間がかかる。
外国人が北京・北部中国で暮らす際、「水の無駄遣いへの意識が高い文化」を感じることがある。シャワーを短くする、洗車用水を再利用する——これは節約の習慣というより、水が「当たり前にある」という前提がない地域での合理的な行動だ。
南水北調の水が北京の蛇口に届く——その背後にある工事と移住とコストを想像すると、コップ一杯の水の重みが違って感じる。