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ドイツ人はなぜ家を買わないのか——持ち家率50%以下の謎

EU加盟国の中でドイツの持ち家率は最も低い水準にあります。なぜドイツ人は賃貸を選ぶのか。住宅市場の文化的・制度的背景を解説します。

2026-06-01
住宅持ち家賃貸ドイツ不動産

この記事の日本円換算は、1EUR≒163円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

ドイツの持ち家率(Wohneigentumsquote)は約50%程度と推定されており、EU加盟国の中でも特に低い水準だ(Eurostat等の各種統計を参照)。スペインやポーランドが80%以上、日本も60%前後を維持していることを考えると、ドイツは際立った「賃貸大国」に見える。

なぜドイツ人は家を買わないのか。

賃貸保護法という制度的背景

ドイツの借地借家法(BGB)は、賃借人の保護が非常に手厚い。合理的な理由なく家主が賃貸契約を終了させることは原則できない。家賃値上げにも上限がある(Mietpreisbremse:家賃ブレーキ制度)。

日本では「更新時に家賃を上げられるかも」「突然退去を求められるかも」という不安が購入動機のひとつになるが、ドイツでは賃貸でも長期的な安定が保障されやすい。持ち家を買わなくても同じ場所に安心して住み続けられるなら、わざわざ大きな資金を使って買う動機が弱くなる。

歴史的背景:戦後のインフレトラウマ

ドイツ人が「安定した資産」に価値を見出す一方で、「不動産投資」という発想自体に慎重な傾向がある、という指摘がある。

第一次世界大戦後のハイパーインフレ(1923年)と第二次世界大戦後の混乱を経験した歴史が、「現物資産への過度な信頼」よりも「安全な現金と貯蓄」という志向を育てた、という見方がある(ただしこれは文化論的解釈であり、単純化には注意が必要だ)。

購入にかかるコストの高さ

ドイツで不動産を購入する場合、物件価格以外に以下のコストがかかる:

  • 不動産譲渡税(Grunderwerbsteuer):州によって異なるが3.5〜6.5%
  • 公証人費用:約1〜2%
  • 土地登記費用:約0.5%
  • 不動産仲介手数料(Maklerprovision):最大3.57%(買主負担分)

合計で物件価格の10〜15%に相当するコストが発生する。頭金も一般的に20〜30%以上が必要とされるため、初期費用の高さがネックになっている。

ベルリンでの近年の変化

2010年代後半から、ベルリンを中心に不動産価格が急上昇した。低金利・移住者増加・供給不足が重なった結果だ。「今買わないと永遠に買えない」という心理が広がり、購入者が増えた時期もある。しかし金利上昇(2022年以降)で住宅ローン負担が増加し、市場は再調整に入った。

在住者へのヒント

長期滞在予定がないなら賃貸が合理的。ドイツの賃貸市場は日本より保護が手厚く、「賃貸でも長く住める」環境は整っている。購入を検討するなら、物件価格に加えて上記のコストを必ず試算してから判断するのが現実的だ。

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