ドイツの父親育休取得率は43%——Elternzeitの制度設計が男性の行動を変えた理由
ドイツの育児休業(Elternzeit)は父親が2ヶ月取得すると給付金が14ヶ月に延長される。制度設計が男性の育休取得行動をどう変えたかを数字で追う。
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ドイツの父親の育休取得率は約43%(Destatis、2023年)。日本の約17%(2023年度)と比較すると2.5倍だ。だがこの数字は2006年以前には7%だった。何が変わったのか。
答えは制度設計の「仕掛け」にある。
Elterngeldの「2ヶ月ボーナス」
2007年に導入されたElterngeld(親手当)は、出産後の親に最大12ヶ月間、手取り給与の約65%(上限€1,800/月、約288,000円)を支給する制度だ。
ここに仕掛けがある。もう一方の親(多くの場合は父親)が最低2ヶ月の育休を取得すると、給付期間が12ヶ月から14ヶ月に延長される。父親が2ヶ月取れば、家計全体で2ヶ月分のElterngeldが追加される。
取らなければ損をする——このインセンティブ設計が、父親の行動を変えた。
ElterngeldPlusという選択肢
2015年からElterngeldPlus(親手当プラス)が導入された。通常のElterngeldの半額を最大24ヶ月間受け取れる仕組みで、パートタイム勤務と育児を両立する親向けだ。
両親がともに週25〜30時間のパートタイムで働きながらElterngeldPlusを受給すると、さらに4ヶ月のパートナーシップボーナスが加算される。フルタイム復帰を急がずに、段階的に働き方を戻せる設計になっている。
2ヶ月で何が変わるのか
ドイツの父親が取得するElternzeitの平均期間は約3.6ヶ月。2ヶ月の最低ラインを超えている。
「2ヶ月だけ育休を取っても意味がない」という批判もあるが、実際にはこの2ヶ月で父親のケア能力が変わる。おむつ替え、夜泣き対応、小児科の予約——これらを自分で回した経験があるかないかで、復職後の家事育児分担に差が出るという調査結果がある(DIW Berlin、2022年)。
Kitaとの接続
Elternzeitの終了後、多くの家庭がKita(保育園)に子どもを預けて復職する。ドイツでは1歳以上の子どもにKitaの法的権利(Rechtsanspruch)がある。
だが実態としてKitaの空きが足りない。ベルリンではKitaの待ちリストが6ヶ月〜1年になることもある。Elternzeitを延長してKitaの空きを待つ家庭も少なくない。
在独日本人家庭の活用法
日本人駐在員がElternzeitを取得するには、ドイツの社会保険に加入していることが条件だ。駐在員が日本の社会保険のみに加入している場合はElterngeldの対象外になる可能性がある。雇用契約と社会保険のステータスを事前に確認しておく必要がある。
申請はElterngeldstelle(各自治体の窓口)で行う。出生証明書、給与明細6ヶ月分、雇用主の証明書が必要。申請期限は出生後3ヶ月以内が推奨されている(遡及支給は最大3ヶ月)。
制度を使い倒すには、出産前にElterngeldstelleに相談に行くのが最善だ。ドイツの役所は予約制が多いので、出産予定日の2〜3ヶ月前に予約を入れておくと余裕がある。