ガウディの陰にある建築:スペインが誇るモダン建築の多様さ
サグラダ・ファミリアだけがスペインの建築ではない。ラファエル・モネオ、ザハ・ハディッドが手がけたビルバオ、サンティアゴ・カラトラバの橋——建築好きが知るべきスペインの空間。
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スペインの建築といえばガウディが先に浮かぶ。サグラダ・ファミリア、カサ・バトリョ、グエル公園——バルセロナ観光の9割はガウディを軸に動いている感がある。でもスペインの現代建築はガウディの影の外でも世界水準の動きをしている。
ビルバオ効果(The Bilbao Effect)
「ビルバオ効果」という言葉がある。衰退した工業都市が文化施設への大型投資で再生した事例を指す国際的な概念で、その語源となったのがビルバオのグッゲンハイム美術館(1997年開館)だ。
建築家フランク・ゲーリー設計のチタン製の曲面建築は、当時の世界建築界に衝撃を与えた。開館から数年でビルバオの観光者数が何倍にも増えたとされており(推定)、「建築が都市を変えられる」という命題の生きた証明になった。
ビルバオは元は製鉄・造船で栄えた工業都市で、産業衰退後に人口が減少していた。グッゲンハイムへの投資は賭けだったが、結果として成功した都市再生の事例として世界中で研究されている。
ラファエル・モネオ:スペインが誇る建築の巨匠
ラファエル・モネオは1996年のプリツカー賞(建築界のノーベル賞)受賞者で、スペイン出身の建築家として最高峰の評価を受ける。マドリードのアトーチャ駅改修(熱帯温室を内包した巨大空間)はスペインを訪れる多くの人が通過する場所だ。
モネオの設計は歴史的文脈への敬意と現代性の融合が特徴で、過去の建築言語をそのまま使うのでも完全に排除するのでもない独自の立ち位置がある。
カラトラバの橋とアテネ競技場
サンティアゴ・カラトラバはバレンシア出身の建築家・エンジニアで、骨格構造を芸術として見せる独特のスタイルで知られる。バレンシアのシウタット・デ・レス・アルツ・イ・ラ・シエンシア(科学芸術都市)は彼の代表作のひとつで、映画のセットのような白い建物群が海沿いに並ぶ。
ただしカラトラバの大型プロジェクトはコスト超過と施工問題でも批判されることが多く、バレンシア市とは法的争いになったプロジェクトもある。美しさと現実の間の緊張という建築の永遠の問いを象徴する存在でもある。
在住者としての建築の楽しみ方
スペインの都市を歩くと、表通りの歴史的建物の裏に1960〜80年代のポストモダン的な集合住宅が立ち並んでいたり、工場跡地がカフェやアートスペースに転用されていたりする。
「観光名所」としての建築だけでなく、日常の街を形作る無名の建物群に目を向けると、スペインの各時代の経済と文化がそこに刻まれていることに気づく。建築は都市の地質学だ、と言う人がいる。歩くほどに層が見えてくる。