闘牛文化の現在——支持者と廃止論と在住外国人の視点
スペインの闘牛は今も続いているが、支持者と廃止論者の対立は深い。在住外国人として「見るべきか否か」を判断する前に、現状を知っておく価値はある。
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スペインに来て最初に「どう向き合うか」を問われる文化の一つが闘牛(コリーダ・デ・トロス)だ。支持者は「スペインの魂」と呼び、廃止論者は「動物虐待」と批判する。どちらの声も現地にある。
現在の規模と開催状況
スペイン文化省の統計によれば、闘牛イベントは2010年代から減少傾向にある。2019年には約1,700件の闘牛関連イベントが記録されたが(文化省データ)、カタルーニャ州は2012年に禁止(ただし憲法裁判所が2016年に覆した)、カナリア諸島は1991年に廃止。地域によって扱いが大きく異なる。
マドリードのラス・ベンタス闘牛場(収容15,000人)は世界最大の闘牛場の一つで、サン・イシドロ祭(5月)の期間中は連日開催される。チケットは€10〜€150程度(約1,600〜24,000円)。観光客向けの席と常連向けの席では価格帯が異なる。
支持者の論点
闘牛を支持するスペイン人(特に中高年世代・南部)は、これを「文化遺産」「芸術形式」として位置づける。牛の動きと闘牛士(マタドール)の技術の絡み合いを「チョレオグラフィー(振付)」として鑑賞する文化がある。2013年にスペイン政府が闘牛を「国家文化遺産」に指定したことで、廃止論議に一定の歯止めがかかった。
廃止論の現状
若い世代を中心に闘牛への関心が薄れ、廃止を求める声は増えている。2021年のCIS(スペイン社会研究センター)調査では、18〜24歳の75%以上が闘牛に「興味がない」または「反対」と回答している。ただし同調査では40代以上では支持者と反対者がより拮抗していた。
在住外国人の「観るか否か」
在住外国人の間では意見が分かれる。「文化理解のために一度は見た」という人と「動物倫理上の理由で行かない」という人、どちらも相当数いる。スペイン人と話す場面で「闘牛について聞かれたら」どう答えるかを準備しておくと、無用なトラブルを避けられる。
スペイン人を不必要に傷つけない言い方としては「まだ見ていないが、文化として関心はある」という保留の立場が無難とされることが多い。ただしそれが自分の本心でないなら、正直に自分の立場を伝えることをためらわない人も増えている。
観光として行く場合
もし観ることにした場合、ラス・ベンタスは最大の舞台。サン・イシドロ祭の期間(5月中旬〜6月上旬)が最高峰とされる。アンブラ席(日陰)はソル席(日向)より高い。開始は夕方6〜7時が多く、1回の公演で3頭の牛が登場する。