スペインの医療制度は無料だが「待つ」——公的医療の使い方と限界
スペインの公的医療(SNS)は外国人にも適用されるが、専門医の予約は数ヶ月待ち。公的医療と私的医療の使い分け、費用の目安を解説。
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スペインの公的医療制度(Sistema Nacional de Salud、SNS)は、居住者であれば外国人にも適用される。診察料も薬代も基本的に無料か極めて低額だ。しかし「無料」の代償がある。待ち時間だ。
公的医療の仕組み
スペインでは、社会保障に加入している労働者(自営業含む)とその家族は公的医療の対象になる。在住許可を持つ外国人も、社会保障番号を取得すれば同じ制度を利用できる。
最初のステップは、住所地のCentro de Salud(保健センター)でmédico de cabecera(かかりつけ医)の登録を行うことだ。Tarjeta Sanitaria Individual(個人医療カード)が発行される。
受診の流れ
- かかりつけ医(médico de cabecera)の予約: 電話、アプリ、またはCentro de Saludの窓口で予約。地域によるが、当日〜1週間後の予約が取れることが多い
- 診察: かかりつけ医が診察し、必要に応じて専門医への紹介状を書く
- 専門医(especialista): ここが最大のボトルネック。紹介状を受け取ってから実際に専門医に診てもらえるまで、数週間〜数ヶ月かかることがある
スペイン厚生省の統計によると、専門医の平均待ち時間は約95日(2024年時点)。皮膚科や眼科は特に長く、半年待ちもある。
私的医療(Seguro Privado)
待ち時間を回避するために、多くのスペイン在住者が私的医療保険に加入している。
主な保険会社はSanitas、Adeslas、Mapfreなど。月額50〜150EUR(約8,000〜24,000円)程度で、専門医への直接予約(紹介状不要)、短い待ち時間、私立病院での診療が可能になる。
日本の「公的保険+私的保険」の二階建ては奇異に感じるかもしれないが、スペインでは一般的だ。特に企業の福利厚生で私的保険が提供されるケースが多い。
薬代
公的医療カードがあれば、処方薬は自己負担が軽減される。
- 就労者: 薬価の40%を自己負担(月の自己負担上限あり)
- 年金受給者: 10%
- 低所得者: 無料
薬局(Farmacia)はスペイン全土に密度高く存在し、緑の十字マークが目印。処方箋なしで買える市販薬も充実している。
救急(Urgencias)
救急外来は24時間対応で、公立病院のUrgenciasに行けば誰でも診てもらえる。ただし、緊急度の低い症状だと数時間待たされる。救急の電話番号は「112」(EUの共通緊急番号)。
救急車は無料で呼べるが、到着までに時間がかかる地域もある。マドリードやバルセロナの中心部なら比較的早い。
日本語対応は期待しない
スペインには日本語対応の医療機関はほぼない。英語が通じる医師もいるが、公立病院のかかりつけ医レベルではスペイン語のみのケースが多い。
医療用語のスペイン語を事前に覚えておく、または通訳アプリを活用する。私的保険に加入していれば、保険会社が通訳サービスを提供している場合もある。
スペインの医療は「質は高いが待つ」。急がない症状なら公的医療で十分。急ぐなら私的保険が必要——この使い分けが在住者の基本戦略だ。