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スペインの相続法|遺言があっても子どもに3分の2渡る「強制相続分」の仕組み

スペインの相続法における強制相続分(Legitima)の仕組みを解説。外国人居住者が知っておくべき遺言作成のポイントと日本法との適用関係も紹介します。

2026-05-19
スペイン相続法律遺言税金

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日本では遺言で「全財産を配偶者に」と書けば、遺留分を除いた大部分を配偶者に渡すことができます。スペインでは事情が全く違います。子どもがいる場合、遺産の3分の2は強制的に子どもに渡る仕組みになっているのです。

Legitima(レヒティマ)の三分割

スペインの一般的な相続法(Codigo Civil)では、遺産は3つに分割されます。

  1. Legitima estricta(厳格な相続分): 遺産の3分の1。子ども全員に均等に分配。遺言でも変更不可
  2. Mejora(改善分): 遺産の3分の1。子どもの中から特定の誰かに多く渡せる
  3. Libre disposicion(自由処分分): 遺産の3分の1。誰にでも自由に渡せる

つまり、どう遺言を書いても遺産の3分の2は子どもに行きます。配偶者には用益権(Usufructo)が認められますが、所有権は子どもに移る。日本の遺留分(子ども全体で2分の1)と比べても、子どもの取り分がかなり大きい制度です。

外国人はどの国の法律が適用されるか

EU加盟国間では、2015年発効のEU相続規則(Brussels IV)により、原則として「常居所地国の法律」が適用されます。つまりスペインに住む日本人がスペインで亡くなった場合、デフォルトではスペインの相続法が適用される。

ただし、遺言で「本国法(日本法)を適用する」と明記すれば、日本の相続法を選択できます。この一文があるかないかで、配偶者の取り分が劇的に変わります。

相続税は自治州で大きく異なる

スペインの相続税は自治州(Comunidad Autonoma)ごとに異なります。マドリードやアンダルシアは配偶者・子どもへの相続税をほぼ免除。一方、カタルーニャやバレンシアは相当な税率が残っています。

同じ資産を相続しても、住む場所によって税負担が10倍以上変わる可能性がある。スペイン国内での引っ越しが相続対策になるという、日本では考えにくい状況です。

遺言を作成すべき理由

スペインで遺言(Testamento)を作成するには、公証人(Notario)の面前で手続きを行います。費用はEUR 40〜80(約6,400〜12,800円)程度と安い。

遺言がない場合、スペインの法定相続のルールがそのまま適用され、手続きに数ヶ月〜1年以上かかることもあります。特に外国人は、本国法の適用を選択する意思を遺言に明記しておかないと、意図しない分配になるリスクがある。

EUR 80以下で将来の家族のトラブルを防げるなら、これほどコストパフォーマンスの高い法律手続きはありません。

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