スペインの「ベッカム法」——海外所得が非課税になる税制優遇の条件と注意点
スペインには外国人労働者向けの税制優遇「ベッカム法」(Ley Beckham)がある。所得税率24%の固定税率、適用条件、申請手順を在住日本人向けに解説。
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スペインに移住した外国人が、スペイン国内の所得に対して最大6年間、24%の固定税率で課税される制度がある。通称「ベッカム法」(Ley Beckham)。2005年にサッカー選手デビッド・ベッカムがレアル・マドリードに移籍した際に適用されたことから、この名がついた。
スペインの通常の所得税率は累進課税で最大47%。24%との差は23ポイント。年収EUR 100,000(約1,600万円)の場合、年間の税金がEUR 23,000(約368万円)近く減る計算になる。
適用条件
ベッカム法の正式名称は「Régimen Fiscal Especial para Trabajadores Desplazados」(派遣労働者のための特別税制)。適用を受けるには以下の条件を満たす必要がある。
- 過去10年間(2023年の改正で5年に短縮)、スペインの税務上の居住者でなかったこと
- スペインの企業との雇用契約、またはスペインへの派遣命令があること
- スペイン国内で業務を行うこと(リモートワークでの適用は制限あり)
2023年の法改正(Ley de Startups)により、スタートアップの経営者やデジタルノマドにも適用範囲が拡大された。フリーランス(autónomo)でも、一定の条件を満たせば申請できるようになっている。
何が「非課税」になるか
ベッカム法の最大のメリットは、スペイン国外で得た所得が原則非課税になることだ。通常、スペインの税務居住者は全世界所得に課税されるが、ベッカム法の適用者はスペイン国内の所得のみが課税対象になる。
ただしキャピタルゲイン(資産売却益)は対象外。また、EUR 600,000(約9,600万円)を超える部分には47%が適用される。「富裕層の節税ツール」としての機能は、2023年の改正で一部制限された。
申請手順
- スペインに到着してから6ヶ月以内にAgencia Tributaria(税務署)に申請する(Modelo 149)
- 雇用契約書またはスペインでの業務を証明する書類を提出する
- 承認されると、最大6年間(移住年+5年)の特別税制が適用される
申請期限の6ヶ月を過ぎると権利を失う。これを知らずに通常税率で初年度を確定申告してしまう在住者もいる。移住前にGestor fiscal(税理士)に相談しておくことを勧める。
注意点
ベッカム法は万能ではない。相続税・贈与税には適用されない。スペインの社会保障(Seguridad Social)の負担は通常通り発生する。また、日本との租税条約との関係で二重課税のリスクがあるため、日本側の税務処理も確認が必要だ。
制度は変更される可能性がある。2023年の改正は適用範囲を広げたが、将来的に条件が厳しくなる可能性もゼロではない。現時点の条件が自分に有利なら、早めに動く方がリスクは小さい。