スペイン人が海外に出た後:移民送金と帰国の経済学
金融危機後の2008〜2015年にスペインを出た若者たちの一部が戻りつつある。送金経済・海外スペイン人コミュニティ・Uターンの実態を読む。
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スペインが「移民を送り出す国」でもあることは、日本ではあまり知られていない。受け入れる側のイメージが強いが、特に2008年の金融危機以降、大量の若いスペイン人がドイツ・英国・フランス・南米へと渡った。その数は推定で数十万人規模とされている。
「失われた世代」の移動
リーマンショック後のスペインは若者失業率が50%近くに達した時期があった(推定:ピーク時)。大学を出ても仕事がない。親の家に住み続けるか、海外に出るか。多くの若者は後者を選んだ。
主な行き先はドイツ(工業・医療分野)、英国(サービス業・IT)、スイス(看護・ホテル業)、そして中南米(アルゼンチン・メキシコ・チリ)だった。スペイン語圏なので中南米は言語的なハードルが低い。
送金の規模とその使い道
スペイン人の海外送金は中南米の移民送金と比較すると規模が小さいが、特に家族の援助が目的の送金は一定程度存在する。「自分は外で稼いで、スペインの親を助ける」という構図は、かつての南欧諸国が北欧や北米に送り出した移民世代と重なる。
ただし現在のスペイン移民の多くは大卒以上の高学歴層であり、「送金して家族を養う」というより「自分のキャリアのために出た」という意識が強い傾向がある。
Uターンの波
2017年頃から景気が回復してきたスペインでは、海外に出ていた若者の一部が戻り始めた。しかしUターン組が直面するのは「経験とスキルの格差」だ。ドイツで5年働いた人とスペインにいた同年代の人では、職種・賃金・職場文化のギャップが生まれていることがある。
「海外帰りで扱いにくい」という偏見も一部には存在するという。欧州式の働き方やダイレクトなコミュニケーションスタイルに慣れて帰ってきた人が、スペインの職場文化(階層重視・間接的なコミュニケーション)に違和感を感じるケースは少なくない。
海外スペイン人コミュニティの厚さ
ベルリン、ロンドン、チューリッヒ、ブエノスアイレス——これらの都市にはスペイン人のコミュニティが確立されており、スペイン語のバー、スペイン料理の食材店、同郷コミュニティのWhatsAppグループが存在する。移民のネットワークは雇用紹介や住居探しでも機能している。
日本に来るスペイン人
日本に来るスペイン人は数が多くはないが、日本語学習者・文化好き・マンガ・アニメファンが多い傾向がある。就労ビザより観光・学生ビザで来て、そのまま延長するパターンが多いとされる。
スペイン人全体でみると「外に出る」ことへの心理的ハードルは日本人より低い。語学の壁(英語力の格差)はあるが、ヨーロッパ内移動の自由を日常的に使っている世代にとって、国境を越えることは選択肢のひとつだ。
移民を「出す」国と「受け入れる」国を同時にやっているスペインの複雑さは、人の流れを見るとよくわかる。