オリーブオイルの価格が3倍になった——スペインの干ばつと食卓の危機
世界のオリーブオイルの約45%を生産するスペインで、干ばつによる不作が価格を急騰させている。1リットルEUR 10超のオリーブオイルが食文化に与える影響。
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スペインのスーパーで、オリーブオイルに盗難防止タグがついている。冗談ではない。2023年以降、オリーブオイルの小売価格が急騰し、万引きの対象になっているのだ。
エクストラバージンオリーブオイル1リットルの価格は、2021年にはEUR 3〜4(約480〜640円)だった。2024年にはEUR 10〜14(約1,600〜2,240円)に跳ね上がった。3年で3倍以上だ。
なぜ高騰したのか
スペインは世界のオリーブオイルの約45%を生産する世界最大の産地だ。アンダルシア州だけで世界生産量の約30%を占める。この圧倒的な集中が、リスクの集中でもある。
2022年と2023年にスペイン南部を記録的な干ばつが襲い、オリーブの収穫量が激減した。2022/23年シーズンのスペインのオリーブオイル生産量は約68万トンで、通常年の半分以下に落ち込んだ。
世界の供給の半分近くを担う国の生産が半減すれば、価格が跳ね上がるのは当然だ。
スペイン人の食卓への影響
オリーブオイルはスペイン料理の基礎だ。サラダにかける、パンにつける、炒め物に使う、フライに使う——1世帯あたりの年間消費量は約10リットルとされる。価格が3倍になれば、年間の支出増加はEUR 60〜80(約9,600〜12,800円)に達する。
低所得世帯ではヒマワリ油への切り替えが進んでいる。これはスペインの食文化にとって小さくない変化だ。「オリーブオイルの代わりにヒマワリ油を使う」のは、日本で「醤油の代わりにめんつゆを使う」のとは次元の違う話だ。料理の根本的な味が変わる。
在住者としての対策
スーパーのプライベートブランド(PB)のオリーブオイルは、ブランド品より30〜40%安い。味の差は小さく、日常使いには十分だ。MercadonaのPBオリーブオイルは品質に定評がある。
また、スペインでは「aceite de oliva(オリーブオイル)」と「aceite de oliva virgen extra(エクストラバージン)」で価格帯が異なる。調理用にはaceite de oliva、サラダや仕上げにはvirgen extraと使い分けるのが、コストパフォーマンスを高める方法だ。
干ばつは一過性ではなく、気候変動による構造的な問題だ。オリーブの産地が北に移動するという研究もある。スペインの食卓を支えてきたアンダルシアのオリーブ畑が、数十年後にどうなっているか——それは農業の問題であると同時に、文化の存続の問題でもある。