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スペインの「obra」が終わらない——リフォーム工事が3倍の期間かかる構造的理由

スペインの集合住宅リフォーム(obra)は予定より2〜3倍の期間がかかることが珍しくない。工事の許可制度、職人の労働文化、在住者が知るべき対処法を解説。

2026-05-22
リフォーム工事集合住宅騒音生活

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

スペインの不動産広告で「para reformar(要リフォーム)」という文字を見たら、それは「安いが時間とお金がかかる」の同義語だ。EUR 150,000(約2,400万円)の物件を買い、EUR 50,000(約800万円)でリフォームする計画が、EUR 80,000(約1,280万円)と8ヶ月の工期に膨らむのはスペインの日常だ。

「2ヶ月で終わります」と業者が言ったら、6ヶ月を覚悟した方がいい。

なぜ遅れるのか

理由は3つある。

1つ目は許可制度だ。スペインの集合住宅でリフォームをするには、自治体(Ayuntamiento)の工事許可(licencia de obra)が必要。軽微な内装工事(obra menor)でもEUR 200〜500(約32,000〜80,000円)の手数料と2〜4週間の審査期間がかかる。構造変更(obra mayor)は2〜6ヶ月。許可なく工事を始めると、罰金EUR 6,000〜30,000の対象になる。

2つ目は職人(albañil)の予約が取れないこと。腕の良い職人は数ヶ月先まで予定が埋まっている。電気、配管、タイル、塗装——それぞれ別の専門職人が必要で、スケジュールの調整が難航する。

3つ目は労働文化だ。スペインの職人は朝8時に来て、10時にコーヒー休憩(almuerzo)、14時に昼食休憩で帰る。午後に戻ってくる職人もいるが、夏場は17時以降でないと暑くて作業できない。実質的な作業時間は1日5〜6時間だ。

騒音の問題

自分の部屋のリフォームでなくても、上下左右の住人が工事をすれば影響を受ける。ドリル音、ハンマー音、資材を運ぶ足音——スペインの集合住宅は防音性能が低い建物が多く、工事の音は建物全体に響く。

多くの自治体で工事可能な時間帯は平日8:00〜21:00、土曜8:00〜14:00。日曜・祝日は禁止。だが実際には8:00きっかりにドリルが始まる職人は多い。

在住者の対処法

入居前にできることがある。不動産を内見する際に「建物内で工事中の部屋はあるか」を管理人(portero/a)に確認する。スペインの集合住宅には管理人が常駐していることが多く、工事スケジュールを把握している。

自分がリフォームする場合は、複数の業者から見積もり(presupuesto)を取る。スペインでは最低3社の見積もりを比較するのが一般的で、価格差が30〜50%になることも珍しくない。

契約書にはペナルティ条項(cláusula de penalización)を入れてもらう。「工期が2ヶ月を超えた場合、1日あたりEUR XXの減額」——これがないと、遅延に対するインセンティブが業者にゼロになる。

スペインのリフォームは忍耐の修行だ。だが完了したときの「やっと終わった」という解放感は、他の国では味わえない深さがある。

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