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レシデンシアという選択——スペインの高齢者ケア施設の実態

スペインの高齢者ケア施設「レシデンシア」の月額費用は公立€800〜私立€2,500超。COVID-19で浮き彫りになった課題と、在住外国人が親の呼び寄せを考えるときに知っておくべきことを解説する。

2026-05-09
生活高齢者介護医療家族

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

スペインの65歳以上人口は全人口の約20%、約940万人(2024年、INE)。しかし高齢者向け介護施設(residencia de mayores)のベッド数は約39万床で、高齢者100人あたり約4.2床しかない。日本の特養と有料老人ホームを合わせた整備率と比べても低い水準だ。

レシデンシアの種類と費用

スペインの高齢者施設は大きく3種類に分かれる。

  • 公立レシデンシア(pública): 自治州が運営。入居費は所得に応じて€0〜800(約0〜12.8万円)/月。ただし待機者リストが長く、入居まで1〜3年かかる
  • 委託型(concertada): 自治州が民間施設の枠を買い上げる形式。費用は公立に準じるが、空き待ちは短め
  • 私立レシデンシア(privada): 月額€1,500〜3,000(約24万〜48万円)が中心価格帯。マドリードやバルセロナでは€3,500以上の高級施設もある

公立施設への入居は「Ley de Dependencia(2006年、要介護者支援法)」に基づく要介護認定(Grado I〜III)が必要で、申請から認定まで数ヶ月かかる。

COVID-19が暴いた構造問題

2020年のパンデミックで、スペインのレシデンシアは壊滅的な打撃を受けた。スペイン政府の公式報告では、レシデンシア入居者のCOVID-19関連死者数は約3万人。全死者数の約47%がレシデンシア入居者だった。

背景には慢性的な人員不足がある。介護士(auxiliar de enfermería)の平均月給は€1,200〜1,500(約19.2万〜24万円)と低く、離職率が高い。1人の介護士が夜勤で30〜40人の入居者を担当する施設もあった。

パンデミック後、各自治州で介護士の最低配置基準の見直しが進んでいるが、人件費の上昇が施設運営を圧迫している。

在宅介護という「もう一つの選択」

スペインでは伝統的に「家族が高齢者の面倒を見る」文化が強く、在宅介護(cuidado a domicilio)を選ぶ家庭が多い。自治州から在宅介護サービス(SAD: Servicio de Ayuda a Domicilio)を受けられる場合、ヘルパーが週に数回訪問する。

在住外国人の中には、スペインに高齢の親を呼び寄せたいと考える人もいる。EU域外の親の場合、家族呼び寄せビザ(reagrupación familiar)の対象になりうるが、65歳以上の親の呼び寄せは条件が厳しい。十分な収入の証明、住居の広さの基準、親がスペインの公的医療保険に加入できない場合は民間保険の加入が必要になる。

民間保険のカバー範囲

高齢の親を呼び寄せる場合、民間医療保険の費用は年齢によって大きく変わる。70歳以上では月額€200〜400(約3.2万〜6.4万円)が一般的で、既往症がある場合は加入を拒否されるケースもある。

「スペインの医療は無料」というイメージがあるが、それはスペインの社会保障に加入している人の話だ。呼び寄せた親が公的医療を使えるようになるまでには、居住許可や社会保障の手続きに時間がかかる。

高齢化が進むスペインで、介護の問題は在住外国人にとっても他人事ではなくなりつつある。

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