試合の日のバルは戦場になる——スペインのサッカー観戦文化と在住者の巻き込まれ方
スペインではサッカーの試合がある日、バルに大型テレビが設置され、街全体がスタジアムになる。レアル・マドリード対バルセロナの夜に起きること。
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スペインに住んでサッカーに興味がないと言うと、会話が3秒止まる。「じゃあ日曜日に何をするの?」——サッカーはスポーツではなく、社会インフラだ。
リーガ・エスパニョーラの試合がある日、街のバルは大型テレビの前に椅子が並べられ、立ち見客が通りにまであふれる。ゴールが決まると、5ブロック先から歓声が聞こえる。窓を開けていれば、テレビがなくても試合経過がわかる。
エル・クラシコの夜
レアル・マドリード対FCバルセロナ——「El Clásico(エル・クラシコ)」は年に2回、スペイン全土が二分される日だ。
マドリードのバルでバルセロナのユニフォームを着ることは物理的には可能だが、推奨されない。逆もまたしかりだ。冗談めかして「お前、敵じゃないか」と言われる程度で済むことが多いが、酔客が多い深夜帯は避けた方がいい。
試合は通常21時キックオフ(日本の翌4時に相当する時間帯感覚)。終了は23時頃。勝った側のファンはバルに残って深夜まで飲み、負けた側は静かに帰る。翌日の職場では試合の話題が1日中続く。
在住者の巻き込まれ方
サッカーに興味がなくても、巻き込まれるのは避けられない。隣人が試合中にテレビの音量を最大にする。バルの予約が試合日は取れない。日曜日の夕食の時間帯がサッカーの試合と重なる。
最も実用的な対策は、自分のチームを決めることだ。「まだ決めてない」はスペイン人にとって理解しがたい状態で、何度も聞かれる。住んでいる都市のチームを応援するのが最も無難だ。マドリードならレアル、バルセロナならバルサ、セビリアならベティスかセビリアFC。
サッカーの経済規模
リーガ・エスパニョーラの年間売上はEUR 50億(約8,000億円)を超える。選手の年俸だけでなく、バルのビール売上、スポーツ紙の販売、賭けサイトの収益まで含めると、サッカーはスペインのGDPの約1.4%を占めるという試算もある。
スタジアム観戦のすすめ
バルでの観戦に慣れたら、一度はスタジアムに足を運ぶ価値がある。リーガのチケットは試合によって大きく異なり、下位チームのホームゲームならEUR 20〜40(約3,200〜6,400円)で手に入る。レアル・マドリードやバルサの試合はEUR 50〜200(約8,000〜32,000円)が相場だ。
チケットは各クラブの公式サイトか「Viagogo」「StubHub」などのリセールサイトで購入する。スタジアムでは身分証明書の提示を求められることがあるので、パスポートを持参すること。
スペイン人のサッカーへの情熱は、日本人の「野球好き」とはスケールが違う。宗教に近い。日曜のミサに行かなくなったスペイン人は多いが、日曜のサッカーを見なくなったスペイン人はほとんどいない。