スペイン人は夜23時にゴミを捨てる——深夜のゴミ収集と、音のある街の構造
スペインの多くの都市ではゴミ収集が深夜に行われる。夜21〜23時にゴミを出し、収集車が24時〜3時に回収する。なぜ深夜なのか、在住者の生活への影響を解説。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
夜23時、マドリードの路上。パジャマにサンダルの住民が、ゴミ袋を手に外に出てくる。アパートの1階にあるコンテナ(contenedor)にゴミを投げ入れ、また部屋に戻る。10秒で終わる日課。
深夜1時、収集車がやってくる。コンテナを持ち上げ、中身を流し込み、去っていく。その音が窓から聞こえる。これがスペインのゴミ収集のリズムだ。
なぜ深夜なのか
理由は気温と交通だ。スペイン南部の夏は日中40度を超える。朝にゴミを出すと、回収までの数時間で腐敗が進み、悪臭と害虫が発生する。深夜に出して深夜に回収すれば、ゴミが外気に晒される時間を最小限にできる。
もう一つは交通事情。スペインの旧市街は道が狭く、日中の交通量が多い。大型収集車が通るには、車と人が少ない深夜が合理的だ。
ゴミの分別
スペインのゴミ分別はコンテナの色で区分される。
- 黄色: プラスチック・缶・テトラパック
- 青: 紙・段ボール
- 緑: ガラス瓶
- 茶色/灰色: 有機ゴミ(生ゴミ)
- 灰色/黒: その他(残余ゴミ)
日本ほど細かくないが、分別しないと罰金の対象になる自治体もある。バルセロナではオーガニックゴミの分別が2023年に義務化され、違反者にはEUR 300(約48,000円)の罰金が科される。
在住日本人が戸惑うこと
日本のゴミ出しは「朝の行事」だ。決められた曜日の朝にゴミ置き場に出し、昼前に回収される。スペインに来ると、このリズムが180度変わる。
最初は「深夜にゴミを出すのは落ち着かない」と感じるが、慣れると合理的だとわかる。ゴミの曜日を覚える必要がない(毎日出せる)。ゴミ置き場の場所を気にしなくていい(路上のコンテナに入れるだけ)。分別も大まかでいい。
ただし深夜の収集車の音は覚悟が必要だ。コンテナを持ち上げる油圧音、中身を流し込む衝撃音——窓が薄いアパートでは毎晩のイベントになる。寝室が道路側の物件は避けた方が安眠できる。
静寂と騒音の許容
日本なら「深夜の騒音」として問題になるレベルの音が、スペインでは社会インフラの一部として受容されている。ゴミ収集車、バルの喧騒、深夜の会話——スペインの都市は夜が騒がしい。
静寂を求めるか、騒がしさを受け入れるか。これは好みの問題であると同時に、「都市とは何か」の定義の問題でもある。