イベリコ豚の後ろ脚1本EUR 300——ハモン・イベリコの等級制度と経済学
スペインのハモン・イベリコは等級によって価格が10倍違う。ベジョータとセボの違い、原産地呼称、そしてハモンが食卓に届くまでの3年間。
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スペインのバルやスーパーの天井からぶら下がっている生ハムの脚。あれは装飾ではなく在庫だ。ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ(最高等級)の後ろ脚1本はEUR 300〜600(約48,000〜96,000円)。一方、ハモン・セラーノ(白豚の生ハム)なら1本EUR 30〜50(約4,800〜8,000円)で買える。
同じ「スペインの生ハム」でも、価格に10倍の差がある。この差はどこから来るのか。
等級制度——ラベルの色で分かる
スペイン政府は2014年にハモン・イベリコの等級を4段階に整理し、ラベルの色で区別するシステムを導入した。
- 黒ラベル(Bellota 100% Ibérico): 純血イベリコ豚、放牧地でどんぐりだけを食べて育った最高級品
- 赤ラベル(Bellota Ibérico): イベリコ豚(交雑あり)、どんぐり肥育
- 緑ラベル(Cebo de Campo Ibérico): イベリコ豚、放牧+飼料肥育
- 白ラベル(Cebo Ibérico): イベリコ豚、飼料のみで肥育
黒ラベルが最も高く、白ラベルが最も安い。さらにその下に、イベリコ種ではない白豚の「ハモン・セラーノ」がある。
3年かかる理由
ハモン・イベリコ・デ・ベジョータは、塩漬けから熟成完了まで最低36か月かかる。工場の地下に吊るされた数千本の豚脚が、温度と湿度を管理された環境で静かに熟成していく。
この3年間の保管コスト、資金の回転の遅さが価格に反映されている。生産者は豚を育て始めてから収入を得るまで4〜5年かかる。
スーパーでの買い方
MercadonaやCarrefourなどの大手スーパーでは、スライス済みのパック(100g入り)がEUR 3〜15(約480〜2,400円)で売られている。在住者が日常的に食べるのはこの価格帯だ。
丸ごと1本買うのは、クリスマスやパーティーのとき。専用のハモン台(jamonero)と長いナイフが必要で、薄くスライスする技術も求められる。スペイン人の家庭にはjamoneroが常備されていることが多い。
ハモンはスペインの食卓において、日本の味噌汁のような存在だ。特別なものではなく、毎日そこにある。ただし、「毎日そこにある」ものの中に、3年の時間と数百年の品種改良が詰まっている。