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エル・ゴルド——スペインのクリスマス宝くじが国民行事である理由

スペインのクリスマス宝くじ「エル・ゴルド」は総賞金額24億ユーロ超。国民の75%が参加するこの行事の仕組みと、在住外国人が巻き込まれる12月の熱狂を解説する。

2026-05-09
文化クリスマス宝くじスペイン行事

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スペインの宝くじ「Lotería de Navidad(ロテリア・デ・ナビダ)」の総賞金額は約24億ユーロ(約3,840億円)。世界最大の宝くじだ。1等の「エル・ゴルド(太っちょ)」は€400,000(約6,400万円)で、同じ番号の券が複数枚発行されるため当選者が数百人規模になる。

「分け合う宝くじ」という設計

日本の宝くじと根本的に違うのは、スペインの宝くじが「分配」を前提に設計されていること。1枚€200のくじ(décimo)は10分の1券として€20で買える。さらにそのdécimoを職場や家族で割り勘にする「participación」という慣習がある。

つまり、1つの当選番号に数百人〜数千人がぶら下がっている。1等が出ると町全体が一斉に当選者になる光景は、スペインのニュースの定番だ。

12月22日の抽選会

抽選は毎年12月22日、マドリードのTeatro Realで行われる。テレビ中継は朝9時から約4時間。サン・イルデフォンソ学校の子どもたちが当選番号を歌い上げる独特の形式で、スペイン人はこの抽選の歌声を聞くとクリスマスが来たと感じるという。

在住外国人にとって驚くのは、職場でほぼ強制的にparticipaciónを回されること。「うちのオフィスの番号、買ってくれる?」と聞かれて断ると気まずい空気が流れる。€5〜20程度なので、付き合いの出費と割り切る人が多い。

当選金と税金

2013年以降、€40,000を超える当選金には20%の税金がかかる。それ以前は非課税だったため、古参の在住者は「昔はもっと良かった」とよくこぼす。

エル・ゴルドに限らず、スペインには「El Niño(1月6日抽選)」「Lotería Nacional(通年)」「Primitiva」「Bonoloto」「Euromillones」と宝くじの種類が異常に多い。スペイン人の宝くじ年間支出は1人あたり約€60(約9,600円)と、欧州でもトップクラスだ。

なぜこれほど根づいたのか

エル・ゴルドの歴史は1812年にさかのぼる。ナポレオン戦争中にカディスで始まり、戦費調達が目的だった。200年以上の歴史があるため、「クリスマスにくじを買う」行為がスペイン文化に組み込まれている。

12月になるとバルやレストランの入口に「Nuestro número(うちの番号)」が貼り出される。バルの常連客がその番号を買い、もし当たれば常連全員で祝杯を上げる。宝くじというより、共同体の結束を確認する儀式に近い。

在住外国人がスペインの年末を過ごすなら、最低1枚はdécimoを手に入れて12月22日の抽選中継を見る体験をおすすめしたい。当たるかどうかより、あの抽選の歌声を聞きながらスペイン人と一緒にそわそわする時間こそが、この行事の本質だ。

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