スペインのピソ・コンパルティード——30代でもルームシェアが普通の住宅事情
スペインでは30代でもルームシェア(piso compartido)が一般的。住宅価格の高騰と若者の独立事情を在住者の視点で解説します。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
スペイン人の実家離れの平均年齢は30.4歳。EU平均の26.3歳を大きく上回り、ヨーロッパで最も遅い国の一つだ。理由は単純で、一人暮らしの家賃が払えないからだ。マドリードのワンルームが月700〜1,000EUR(約112,000〜160,000円)。20代の若者の平均月収は1,200〜1,500EUR。家賃だけで収入の半分以上が飛ぶ。
ピソ・コンパルティードとは
Piso compartido(ピソ・コンパルティード)はスペイン式のルームシェアだ。3〜5部屋あるアパートを数人で借り、各自が個室を持ち、キッチン・バスルーム・リビングを共有する。
家賃は部屋単位で300〜600EUR(約48,000〜96,000円)程度。光熱費とWi-Fiを人数割りすると、一人あたりの負担は400〜700EUR。一人暮らしの半額以下で住める。
学生だけでなく、社会人、30代のプロフェッショナル、外国人——幅広い層がピソ・コンパルティードに住んでいる。「30代でルームシェア」に対するスティグマは日本ほど強くない。
探し方
Idealista: スペイン最大の不動産ポータル。「Compartir(共有)」のフィルターでルームシェア物件を検索できる。写真付きで部屋の様子がわかる。
Fotocasa: Idealistaに次ぐ大手。操作感は似ている。
Badi: ルームシェア専門アプリ。入居者のプロフィール(年齢・職業・生活スタイル)が表示されるので、相性の合うシェアメイトを探しやすい。
Facebook・Telegramグループ: 外国人コミュニティのグループでは、英語でのルームメイト募集が活発だ。「Expats in Madrid」「Barcelona Room Rentals」などのグループが参考になる。
内見のチェックポイント
シェアメイトとの面談: スペインでは内見時に現在の住人との面談(entrevista)がある。住人側もシェアメイトを選ぶ権利があるので、相性を確認する場だ。聞くべきことは、生活リズム(夜型か朝型か)、掃除の分担、友人の宿泊ルール。
契約形態: オーナーと直接契約するケースと、メインテナント(主借人)が又貸し(subarrendar)しているケースがある。後者の場合、メインテナントが退去すると全員が出なければならないリスクがある。
共益費(gastos): 家賃に光熱費が含まれているか別なのかを確認する。含まれていない場合、冬場の暖房費で月額が30〜50EUR上がることがある。
トラブルあるある
掃除問題: 共有スペースの掃除を誰がやるかは、世界共通のシェアハウス問題だ。スペインでは掃除当番表を冷蔵庫に貼る家が多い。
騒音: シェアメイトが深夜に友人を呼ぶ。スペインの夜型文化と相まって、平日深夜まで会話が続くことがある。入居前に「夜のルール」を確認しておく。
退去時の精算: 光熱費の未精算、敷金の返還遅延。退去の1ヶ月前には通知し、精算方法を書面で合意しておく。
在住日本人の選択
初めてスペインに住む日本人にとって、ピソ・コンパルティードは最初の住居として合理的だ。初期費用が少なく、家具付きが多く、スペイン語の練習相手が家にいる。生活の立ち上げがスムーズになる。
一方で、プライバシーが限られる。電話で日本語を話していると「何語?」と聞かれる。自炊の匂いに敏感なシェアメイトもいる。慣れるまでの辛抱か、一人暮らしへの切り替え時期を見極めるか——半年ほど住んでみれば、自分にとっての最適解が見えてくる。