スペインのマンションにはポルテロがいる——管理人文化と消えゆく職業
スペインのマンション(finca)には伝統的にポルテロ(管理人)が常駐していた。鍵を預かり、荷物を受け取り、住民の顔を覚える。この職業が消えつつある理由。
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マドリードの古いマンション(finca)のエントランスに入ると、小さな窓付きの部屋がある。ポルテロ(portero、管理人)の詰め所だ。かつてはマドリードのマンションの大半にポルテロがいた。住民の出入りを把握し、郵便物を仕分け、業者の出入りを管理し、共用部分の清掃を行う。
2000年代以降、この職業は急速に減少している。現在のマドリードでは、ポルテロがいるマンションは全体の20%以下とされる。
ポルテロは何をしていたのか
ポルテロの業務範囲は驚くほど広い。正規の業務としては、エントランスの管理、共用部分の清掃、郵便物・荷物の受け取り、修繕業者の立ち会い、住民間のトラブルの初期対応。
非公式には、もっと多くのことをしていた。住民の生活パターンを把握しているので、独居高齢者の安否確認を自然にこなしていた。鍵を閉め出された住民にスペアキーを渡し、子どもの帰宅を見守り、不審者を追い返す。マンションの「人間セキュリティシステム」だ。
なぜ消えつつあるのか
最大の理由はコストだ。ポルテロの人件費は住民の管理費(gastos de comunidad)で賄われる。フルタイムのポルテロを雇うと、月額EUR 1,500〜2,500(約240,000〜400,000円)の給与に加え、社会保険料がかかる。20戸のマンションなら、1戸あたり月EUR 100〜150の負担増だ。
インターホン、オートロック、宅配ボックス、セキュリティカメラ——テクノロジーがポルテロの業務の多くを代替できるようになった。コスト意識の高い住民総会(junta de propietarios)では、ポルテロの廃止が議題に上がることが増えている。
外国人にとってのポルテロ
ポルテロがいるマンションに住むと、生活の安心感が格段に違う。スペイン語が不十分でも、ポルテロが荷物の受け取りや業者の対応を代行してくれる。鍵のトラブル、水漏れ、ゴミの出し方——困ったときにまず相談できる相手がいるのは心強い。
物件を探す際に「portero fisico」(常駐管理人あり)という表記があれば、管理体制がしっかりしている証拠だ。管理費はやや高くなるが、特にスペイン生活の初期には価値がある。
ポルテロはスペインの都市生活に残った「人間のインフラ」だ。効率化の波に消えつつあるが、消えた後に何が失われるかは、いなくなってから分かることが多い。