スペインの賃貸契約の注意点——敷金・契約期間・退去時のトラブルを防ぐ
スペインで賃貸住宅を借りる際の契約形態、敷金(fianza)の上限、最低契約期間、契約解除のルール、退去時のトラブル事例と防止策を在住者向けに整理する。
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スペインで賃貸契約を結ぶとき、日本の「礼金・更新料なし」に喜ぶのは早い。代わりに「敷金の返還トラブル」「契約期間の拘束力」「家主都合の退去要求」という別の問題が待っている。
契約期間の法的ルール
スペインの都市賃貸法(Ley de Arrendamientos Urbanos, LAU 2019年改正)では、居住用賃貸の最低契約期間は以下の通り。
- 個人家主: 最低5年間の居住権が保障される
- 法人家主: 最低7年間
つまり契約書に「1年契約」と書かれていても、借主は法律上5年(または7年)まで更新を求める権利がある。家主側からの契約解除は正当な理由(自己居住の必要性等)がないとできない。
ただし借主側からの途中解約は、最低6ヶ月居住した後、1ヶ月前の書面通知で可能だ。契約書に違約金条項がある場合でも、法律上は月額家賃の1ヶ月分が上限とされている。
敷金(Fianza)
法定の敷金は家賃1ヶ月分。これは自治州政府の預託機関に供託される(マドリード州ではIVIMA、カタルーニャ州ではINCASOL)。
実際には家主が「追加保証金(Garantía adicional)」として1〜2ヶ月分を上乗せ要求するケースが多い。2019年の法改正で追加保証金は最大2ヶ月分に制限された。つまり敷金1ヶ月 + 追加保証金2ヶ月 = 合計3ヶ月分が上限だ。
退去時のトラブルを防ぐ
敷金の返還トラブルはスペイン在住者の間で最もよく聞く問題の一つ。予防策は入居時に始まる。
入居時(必須):
- 物件の状態を写真・動画で記録する(日付入り)
- チェックリスト(inventario)を作成し、家主と双方が署名する
- 既存の傷・汚れ・設備の故障を全て記録に残す
退去時:
- 退去1ヶ月前に書面(burofax推奨)で通知する
- 退去日に家主と一緒に物件の状態を確認し、署名入りの確認書を作成する
- 鍵の返却日を記録する
法律上、家主は退去後1ヶ月以内に敷金を返還する義務がある。返還されない場合、まず内容証明郵便(burofax)で請求し、それでも応じなければ少額訴訟(juicio verbal)で対応できる。€6,000以下の訴訟は弁護士不要だ。
契約書で確認すべき条項
- IBI(固定資産税): 法律上は家主負担だが、契約書に「借主負担」と記載されていることがある
- コミュニティ費(Gastos de comunidad): マンションの共益費。通常は家賃に含まれるが、別途請求されるケースもある
- 修繕義務: 小修繕(€150以下程度)は借主負担、大修繕は家主負担が原則
- 転貸(Subarriendo): 家主の書面同意が必要。無断転貸は契約解除事由になる
契約前にやること
物件を決める前に、Nota Simple(不動産登記簿謄本)をRegistro de la Propiedadで取得して、物件の所有者が契約相手と一致するか確認する。手数料は€10程度。これを怠ると、所有者でない人物と契約してしまう詐欺被害に遭うリスクがある。バルセロナやマドリードでは実際にこの手の詐欺が報告されている。
スペインの賃貸法は借主保護が強い。ただし法律を知らないと保護を受けられない。契約書にサインする前に、LAUの基本条項を確認する時間を取ることが自分を守る最善の方法だ。