サングリアよりTinto de Veranoを頼む理由——スペインの夏はワインをソーダで割る
スペインの夏に最も飲まれるのはサングリアではなくTinto de Verano。赤ワインをレモンソーダで割る、EUR 2以下の庶民の飲み物の話。
この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。
スペインの夏にバルで「サングリア」を頼むと、観光客だと思われる。地元のスペイン人が注文するのはTinto de Verano(ティント・デ・ベラーノ)だ。
赤ワインをレモンソーダ(Casera de limón)で1:1に割ったもの。それだけ。フルーツもスパイスも入らない。価格はバルでEUR 1.50〜2.50(約240〜400円)。サングリアの半額以下で、しかも作るのに30秒もかからない。
なぜサングリアより人気なのか
サングリアは本来、ホームパーティーやフェリア(祭り)で大量に作る飲み物で、バルで1杯ずつ注文するものではなかった。バルのメニューにサングリアがある場合、それは観光客向けの価格設定になっていることが多い——EUR 4〜6(約640〜960円)。
Tinto de Veranoは日常の飲み物だ。仕事帰りにバルに寄って、カウンターに立ったまま1杯飲んで帰る。そのスピード感とカジュアルさに合っている。
地域差
アンダルシアではTinto de Veranoが最も一般的だが、バレンシアでは「Agua de Valencia」(カバ+オレンジジュース+ジン+ウォッカ)、バスク地方では「Kalimotxo」(赤ワイン+コーラ)が夏の定番だ。
Kalimotxoは10代の若者がフィエスタで飲むイメージが強く、大人がバルで注文することは少ない。しかし味は悪くない。赤ワインの渋みとコーラの甘さが意外に合う。
自宅での作り方
- 安い赤ワイン(EUR 1〜2のテーブルワインで十分)
- Casera de limón(レモンソーダ)。なければスプライト系でも可
- グラスに氷を入れ、ワインとソーダを1:1で注ぐ
- レモンのスライスを入れれば完成
ポイントは「高いワインを使わないこと」。ワインの繊細な風味はソーダで消えるので、テーブルワインで十分だ。スペインではスーパーで1本EUR 1〜2(約160〜320円)のワインが普通に買える。日本の感覚では信じがたいが、スペインのワイン生産量は世界第3位。安くて質が高いのは、供給が豊富だからだ。
ワインのカジュアルさ
スペイン人のワインとの付き合い方は、日本人のそれとはまるで違う。ワインは「特別な日の飲み物」ではなく、「水と同じくらい日常にある飲み物」だ。スーパーのワイン売り場にはEUR 1台のボトルが棚の半分を占め、EUR 5を超えると「ちょっといいワイン」の部類に入る。
Tinto de Veranoにワインの品種や年号を気にする人はいない。「赤で、安くて、冷やせるもの」——それだけだ。この潔さが、スペインの食文化の懐の深さを物語っている。
スペインの夏は40℃を超える。その暑さの中で、キンキンに冷えたTinto de Veranoを日陰のテラスで飲む。EUR 2で手に入る幸福としては、これ以上のものはなかなかない。